2024年7月18日(木)

ペット医療事情最前線~日本社会の有り様を問う

2023年10月4日

ペットは動くぬいぐるみではない

 現在、センターの職員は21人。所長を含む12人が獣医師だ。他の自治体にある「キャッチャーさん」と呼ばれる逃げた動物を捕獲する係は廃止されている。

 ボランティアの登録者は160人以上。ミルクボランティアのほかにも「いのち・MIRAI教室支援」「啓発物作成」「成猫飼養管理支援」「成犬飼養管理支援」「譲渡会運営支援」「植栽等清掃支援」といった業務支援ボランティアがあり、犬猫の新たな飼い主探しには34もの団体が登録している。

 19年に新築された施設の延べ床面積は2308平方メートル(㎡)で旧センターの4倍近い広さがある。犬のフロアは2階で、猫のフロアは3階。手術室、レントゲン室、感染症対策室など、獣医療関係の部屋に加え、家庭での暮らしをイメージしながら新しい飼い主さんと犬・猫の相性を見ることができる小さなお茶の間のような「行動観察室」も犬と猫別々にある。

「猫の気持ちを知ろう」--廊下には啓発用の教材が掲示されている 写真を拡大
犬用フロアには、「犬の気持ちを知ろう」の啓発用パネルが掲示されている 写真を拡大

 この充実したセンターを拠点にして、金子氏たちは、犬猫の収容・保護・管理・譲渡業務以外にも、動物愛護の普及や災害時被災動物対策など幅広い活動をしてきた。なかでも企画担当の大塚晃氏(獣医師でもある)が力を入れているのが、市内の小中学校を回って行なう「いのち・MIRAI教室」だ。

 「負担をかけてはいけないので、保護動物を連れて行くことはしません。写真のパネルを持って行き、動物にも気持ちがあるんだよということを伝えています。センターに収容されたばかりの悲しそうな表情と、だいぶ人慣れして生き生きとしてきた表情とを見比べて気持ちを考えてもらったり、センターの役割を説明したりしています」(大塚氏)

 犬猫を飼っている人間としては、動物に気持ちがあるのは当然だが、そうでない人たちにとっては、ただの「動くぬいぐるみ」のような思い込みもあるのかもしれない。昨今のコロナ禍では、ステイホーム時間が増えたことを背景に衝動的にペットを飼い、コロナ禍があけたらモノのように捨てる、という許しがたい事態も起きていると言われているが、法改正前と違って、捨てられる先は「引き取り屋」と呼ばれる闇業者らしい。


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