2024年5月14日(火)

経済の常識 VS 政策の非常識

2023年10月10日

ASEANの経済発展

 ASEANは国際政治の上でも重要であるが、本稿では、経済発展について考えたい。図1は、ASEAN諸国の1平価GDPの推移を見たものである。

 成果を国際的に比較するために、参照国として中国とインドも示している。これで見ると、シンガポールの所得が10.9万ドル(2017年購買力平価ドル)と圧倒的となっている。

 また、ブルネイの一人当たりGDPは低下している。天然ガスの富を国民で分け合っている国だから、人口が増加すれば1人当たりのGDPは減少するということだ。

 シンガポールの数字が大きすぎるため、その他の国の違いが分かるように、シンガポール、ブルネイを除き、23年で1人当たりGDPが1万ドルを超えるマレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムを図2に、1万ドル未満のフィリピン、ラオス、ラオス、カンボジア、ミャンマーを図3に示している。

 図2の国々は、80年代、90年代に順調な成長を示したが、1997年のアジア通貨経済危機によってGDPが大きく低下し、その後の成長率も低下した。さらに、2008年のリーマン・ショック、20年のコロナショックでも成長率が低下したことが分かる。

 図には中国を参照国として書いているが、これらショックの影響もほとんど見られず、今やインドネシア、タイを追い越している。

 図3の国々は、1990年代まで成長率が低かったが、その後、成長を取り戻した。いずれもアジア通貨経済危機の影響がない。アジア通貨経済危機とは、それ以前、図2の国々の発展に目を付けた国際資本が流入、金利低下と通貨高をもたらしたものの、一挙に外資が流出して危機になったものである。

 ところが、図3の国々には、海外資本がそもそも流入していなかったので、発展もわずかだったが、危機も起きなかった。その後、各国が、外貨準備に余裕を持つこと、経常収支黒字を維持すること、固定的な為替制度を止めることによって通貨危機は起きていない。

 参照国としてインドを示しているが、そう大きな成長を示している訳ではない(インドについては、本欄「インドは中国より発展しないのはなぜか」(2022/06/19)で述べたとおりである)。


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