2024年11月22日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2023年10月10日

成長率を期間ごとに分けてみる

 各国ごとの成長率を、アジア通貨経済危機(1997年)、リーマン・ショック(2008年)、コロナショック(2020年)という3つの大きなイベントごとに整理すると表1のようになる。

 この結果は、次のように解釈できる。まず、1997年までで成長率の低かった国、カンボジア、ラオス、ミャンマー(データはないが低かっただろう)、フィリピンは、97年以降の成長率が高まっている。インドも同じである。

 97年までの成長率が高かったインドネシア、マレーシア、タイ、シンガポールは97年以降、成長率が低下している。一方、ベトナム、中国は高かった成長率がさらに高くなった(ただし、近年は低下している)。

 すると、発展の初期には高い成長率を示すが、その後低下していくというほとんどの国で見られる結果である。この典型が日本である。カンボジア、ラオス、ミャンマー、フィリピンは発展の糸口を掴めなかったが、90年代の終わりには何とか成長軌道に乗ったということである。

 ここで、ミャンマー、フィリピン、タイの近年の成長率の低下は著しい。軍事クーデターで民主主義政権を転覆させた結果、外国資本が来なくなったミャンマーの低下の理由は明らかだが、フィリピン、タイの低下の理由はそう明らかでもない。

 シンガポールの成長は驚異的だが、豊かになるにつれて成長率は低下していくというパターンには合致している。日本が成長しなさすぎと考えるべきかもしれないが、シンガポールが、2000年代でも3%近い成長をしているのは驚異的である。

日本は豊かな人を呼び込めるのか

 その理由として、相続税がないこと、低い法人税と所得税によって、優れた企業、能力のある人、豊かな人々を世界中から集めたからだと言われている。すると、豊かになったというより、すでに豊かな人を集めて豊かになっているのかもしれない。

 日本人はお金持ちが嫌いだが、観光業の人でお金持ちが嫌いな人はいない(クレームの多い金持ちは嫌いだろうが)。すると、豊かな人を集めて豊かになれば、日本の金持ち嫌い文化も弱くなるのかもしれない。

 ASEANの国の経済成長の行方を見るには、政治的な安定とどれだけ成長しているか、外国資本を集められているか、が指標となりそうだ。日本を含めた先進国は、安定した政治と外国資本の取入れを求めていくべきだろう。なぜなら、豊かで安定しているASEANがアジアの平和と安定のために必要だからだ。

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