2024年5月17日(金)

インドから見た世界のリアル

2023年10月9日

各国の戦闘機も展示

 インド空軍博物館は、国際空港のすぐ隣にあり、非常にアクセスが良い。日本人でもパスポートと100ルピー(約200円)払い、記名すれば、中を見学することができる。

 一見すると、やはり予算は十分ではなく、米国のスミソニアン航空宇宙博物館のような豪華さはない。しかし、展示内容を見てみると、多国籍の軍用機が多数あり、大型機もあり、インド空軍が経験してきた多くの実戦経験の展示もあり、内容は充実している。

 まず、目につくのは、米国製の巨大なB24爆撃機である。インド空軍の歴史は、英領インド時代に創設されたものである。日本と戦う蒋介石政権の中国を支援する「援蒋ルート」の拠点になったため、米国が多くの大型爆撃機や輸送機を持ち込んだ。

米国が残置したB-24爆撃機。インド空軍機としてポルトガル領ゴア奪還作戦や印パ戦争において、爆撃や海上哨戒に用いた

 第2次世界大戦が終わると、米国はそれらの装備品を置いて帰国したため、インド空軍は急に、大量の大型爆撃機と輸送機を保有することになったのである。それらの爆撃機や輸送機は、第1次印パ戦争や印中戦争において、大きな役割を果たした。印中戦争の展示では、エスカレーションを恐れたインドのネルー首相が、中国軍への空爆を禁止したため、インド空軍は輸送機や偵察機のみの活動であったが、部隊の活躍が記されている。

 博物館の展示で中心になるのは、やはり印パ戦争である。そしてそこには興味深いエピソードがある。

 インドは1965年と71年の印パ戦争において、インド空軍はナットという戦闘機を使用した。この戦闘機は、小型軽量で非常に運動性の高く、ユニークすぎたため、設計した英国では採用されず、輸出もうまくいかなかった。インドだけが、そのナットに目をつけ、ライセンス生産の権利を取得して200機以上生産、実戦投入したのである。

他の国々が見捨てた戦闘機ナット。インドだけが採用し、実戦で実力を証明した

 実戦投入したナットは、パキスタン軍のセイバー戦闘機に対して、その実力を遺憾なく発揮した。ナットの運動性があまりに高いので、ミサイルを回避した、といわれている。他の国の評価を気にせず、自らの評価基準に自信をもって行動する、インドらしい例といえる。

パキスタン空軍の戦闘機セイバー。航空自衛隊など多くの国が採用した

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