2024年5月20日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年10月26日

 筆者のある知人は今年、中国での数年間の駐在を終えて無事日本に帰任したが、中国を出発する前夜のホテルから空港でチェックインするまでの間、友人らがその人を取り囲み、守ってくれたと話していた。これまでに拘束、逮捕された日本人の中に、帰国直前に空港などで拘束されている人が複数いるからだ。

 その知人は中国生活に馴染み、中国人の友人も多かったが、そのような人物でさえ、このように出国間際まで警戒しなければならないのか、と筆者は驚いた。ほかにも、これまで「自分は政府要人とか、偉い人とのネットワークはないから大丈夫」と言っていた人々が、最近になって「何が起きるかわからないから、できるだけ中国には行かず、リモートでやりとりする」と話すように、言動が変化している。

駐在員が減れば、日中関係も冷え込む

 むろん、中国出張者がまったくいなくなったわけではないし、中にはためらいなく中国に出張する人もいるだろう。現在も中国で日々、懸命に仕事をする日本人駐在員や、現地に根を下ろして、中国人と力を合わせてビジネスを行っている日本人は多い。それでも「先が見えないため、駐在員の数は徐々に減らす方針の日系企業が増えているようだ」(現地に住む駐在員)という。

 しかし、多くのやりとりがリモートでできる時代とはいえ、現地に足を運ばなければわからないこと、誤解してしまうことも多い。そんな中、日本人駐在員逮捕のニュースは、日中ビジネスだけでなく、国家間に暗い影を落としている。

中国について、さまざまな視点から伝える連載「チャイナ・ウォッチャーの視点」の記事はこちら

   
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