日本軍はナチスよりも酷い蛮行をしたのか?
本編第1回(10月15日掲載)にて記載した75歳の男性は「日本は慰安婦問題・徴用工問題などで数々の蛮行を行った。ナチスドイツよりも酷い行為を行ったのに韓国に対して賠償も謝罪もしない。ドイツ政府は戦後被害国に対してナチスの罪を認めて謝罪と賠償を果たした。それゆえドイツは世界から尊敬される国家になった。他方で日本は過去の歴史を反省していないのでアジアの国々から信用されない」と罵詈雑言を飛ばしながら日本を批判した。
実はこのドイツと日本を対比する論法は過去何度も韓国の人々から聞かされている。お時間があれば拙稿バックナンバーご参照。『目の当たりにした反日教育の徹底ぶり』のアラフィフの商社員氏、『優秀な学生までも信じる反日史観』のスペイン巡礼中の5人の男子学生、『ダージリンで出会った韓国若者から見えてきた奇怪な思考方法』の男女3人の若者。何度も同じ話を聞かされるので具体的には記述していないが歴史認識の議論では必ず日本とドイツを対比して批判するのは常套だ。
旧日本軍とナチスを対比することに根拠がないし、ナチスによるホローコーストという犯罪行為と日本による朝鮮の植民地支配を比較することに日本国民の大半は当惑するだろう。しかし韓国人のほとんどが共有している歴史認識では戦前の日本とナチスドイツは同類同罪なのだ。
慰安婦問題、元財閥企業グループ経営者の冷静な反応
8月22日。済州島南部の海辺の公園で2人組の60代後半の男性から声を掛けられた。2人は地元出身の幼馴染。1人は地元の網元で漁業組合の幹部、もう1人は財閥グループの元経営者。韓国の濁酒であるマッコリを飲みながらハングルで歓談。
そのうち元経営者は「貴方は慰安婦問題についてどう考えるか」と単刀直入に聞いてきた。微妙な話なので一瞬思案していると「comfort womanのことです」と英語で補足した。相手が2人とも地元の名士であり信頼できる人柄であったので、筆者は咄嗟に自分が知っていることをすべて伝えて相手の反応を見ようと決心した。複雑なテーマなので英語で元経営者に話した。
第1に慰安婦は朝鮮人、中国人、台湾人、フィリピン、インドネシアなどだけでなく、多くの日本人もアジア各地で慰安婦をしていたことを知っているか尋ねた。元経営者はハングルに翻訳して網元に伝えた。網元は初めて聞いたと驚いていた。筆者は当時の日本の農村は貧しくお金のために慰安婦となった少女が少なからずいたことを説明。
第2に日本軍が朝鮮人や他のアジアの女性を強制連行したことはなく、各地の民間業者が新聞広告などで募集したことを説明。そして民間業者が仕事内容を看護婦だと偽ったりして少女たちが慰安婦の仕事を理解しないで現地に送られたケースもあったと補足した。いずれにせよ親が前金を受け取って娘を売るというケースは日本でも朝鮮でも多かったと説明。網元は大きく頷いた。
第3に慰安婦たちは受け取ったお金の一部を軍事郵便制度により郵便為替で故郷に送金していた。朝鮮や台湾の各地には日本と同様の郵便局があったので郵便為替の取り扱い記録は残っている。慰安婦は性奴隷ではなく対価を受け取っていたことが郵便為替記録で証明されている。網元氏は感心したように元経営者の言葉にうんうんと何度も頷いた。
第4に日本軍が敗走するときに非道行為の証拠隠滅のために朝鮮人などアジア出身の慰安婦を虐殺したというのは韓国の慰安婦支援団体の“作り話”である。支援団体は20万人という過大な人数が強制連行されたと訴えているが実在する元慰安婦が余りにも少ないので虐殺されたとしてつじつまを合わせていると専門家から指摘されている。
元経営者は筆者の話した論点は既に知っていたらしく丁寧に淡々と翻訳して網元に伝え、網元氏も確認のために若干の質問をしたのみであった。網元氏は聞き終わってから筆者のコップになみなみとマッコリを注いだ。
慰安婦問題、論客の事業家の反応
9月13日。ソウル近郊の河南市。コンビニのオーナー一族の英語上級者の事業家45歳と遭遇。彼はかなりの論客であり慰安婦問題について筆者の見解を求められたので上記の済州島地元名士に語った論点を披露した。
彼は筆者の論点を俄かには信じられないようであった。彼が長年史実であると信じてきた韓国社会で流布している通説と筆者の指摘の乖離が余りにも大きく困惑している様子だった。しかし軍事郵便を利用した郵便為替送金は少なくとも一部分が事実であろうと認めた。また戦前は韓国の農村では女子に教育は不要とされていたので満足に学校に通っておらず字も読めず悪い業者に騙されて渡航したのではないかと彼は推測した。
さらに「なぜ戦後40年も経過してから市民団体により慰安婦問題が提起されたのかモヤモヤとした疑問を感じるという。なぜもっと早く問題提起しなかったのか。事実を確認しようにも遅すぎる(too late)」と彼は天を仰いだ。
以上 第6回に続く