その主眼は「パレスチナ独立国家を樹立させないようにすることだ」(ベイルート筋)。ハマスを適度に〝管理〟して一定の力を持たせることで、西岸の自治政府を弱体化させ、パレスチナ和平交渉のエネルギーを失わせるということだ。だが、「イスラエルはハマスの〝牙〟を抜いたと思ったが、ハマスの演技の方が上回った」(同)。
サウジとイランを接近させる結果に
このままイスラエルがハマス掃討作戦を続け、シンワルらハマス幹部らを殺害し、組織を壊滅させることができるかどうかは不明だが、言えることはハマスが想定した展開の一部が実現しつつあることだろう。ハマスの奇襲攻撃は忘れられ、逆にニューヨークやロンドンなど各地でイスラエルの残虐なガザ攻撃を非難する抗議行動が多発している。
国連のグテレス事務総長がイスラエルの国際人道法違反を批判し「ガザが子供たちの墓場になりつつある」と断じた。頼みの米国も「病院への攻撃は見たくない」(サリバン大統領補佐官)と当初のイスラエル全面支援の姿勢が変わった。
とりわけイスラエルにとって痛いのは国交樹立が近いといわれたアラブの大国サウジアラビアと不倶戴天の敵イランが急接近している点だ。
イランのライシ大統領はこのほど、サウジで開催されたイスラム協力機構(OIC)首脳会議に出席し、サウジの実質的な最高権力者ムハンマド皇太子と会談、地域の協力を発展させることで一致した。ライシ大統領がサウジを訪問するのは初めてだ。
OICは共同声明で、イスラエルのガザ攻撃を「戦争犯罪」と非難し、「野蛮で残忍、非人道的な虐殺」を即時停止するよう要求した。サウジはイスラエルが一番関係改善を望んできた国だが、最も敵視するイランと親密になるのは最悪の展開だろう。
イスラエル軍が今後、病院を攻撃し、多数の死傷者が出れば、イスラエルの国際的な孤立が一段と深まるのは避けられまい。