2024年5月19日(日)

バイデンのアメリカ

2023年11月20日

 また、個人の立場としても、2000年上院選でジョン・ケリー、08年大統領選でバラク・オバマ両候補を支援するなど、徹底した民主党贔屓の言動に終始した。

トランプを「当選者」とする4つの秘策

 ところが、16年を起点に、チェスブロ氏は従来のハト派的立場から思想的に180度転向し、共和党保守派の活動支援にのめりこんでいく。

 同年上院選では、熱烈なトランプ支持者として知られるロン・ジョンソン議員(ウィスコンシン州)の再選に積極的な役割を果たしたほか、2年後の18年には、ユタ州投票権訴訟で右翼政治家テッド・クルス、マイク・リー両上院議員の主任弁護士をつとめるなど、マスコミ界でも話題となった。この間、共和党各保守派候補に対する個人献金額も、5万ドルの高額に達している。

 そして、20年大統領選では、再選めざすトランプ氏に本腰で肩入れし、「トランプ敗退」確定後も、なお選挙結果を覆すための戦略作成に中心的役割を担った。

 彼がトランプ選対本部幹部宛に用意した20年12月6日付け「内部メモ」や、12月13日、12月30日、12月31日にあいついで発信したEメールメッセージには、いったん敗れたトランプ候補を「当選者」に仕立て上げるための以下のような具体的な〝秘策〟が指南されていた:

1.バイデン候補が僅差で勝利したアリゾナ、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ジョージアなど接戦6州について、民主党がすでに準備した大統領選挙人団とは別に、12月14日までにそれぞれの共和党主導の州議会で独自の大統領選挙人団を選出させる

2.同時並行的に、当該6州では、「選挙不正があった」として、それぞれの州の共和党市民組織が州裁判所に「選挙結果無効」の緊急申し立てを行う。勝訴すれば、民主党選挙人団を共和党選挙人団に入れ替える時間的余裕が確保できる

3.一方、21年1月6日のペンス副大統領(上院議長)が主宰する州ごとの投票結果最終承認審議に関しては、「ペンス氏自身、24年大統領選挙に出馬の意向を表明しており、その任に当たるのは不適当」とし、代わって共和党最古参で保守派のチャック・グラスリー上院議員に担当させる

4.この間、全米で「民主党側の大がかりな選挙不正」PR作戦を展開。世論を自陣に有利に引き寄せることで、トーマス・クラレンス判事ら連邦最高裁保守派がジョージア州などでの投票集計結果に対し「疑念表明」し、最終的に21年1月6日の連邦議会による投票結果最終承認審議を遅らせる                   

 上記のように、選挙結果転覆計画は表面上、説得力のあるものだった。

 しかし、実際には、①当該各州の州務長官らが「選挙不正」を否定し、それぞれの投票結果を最終的に認定した、②連邦最高裁もトランプ陣営の主張にくみせず中立的立場をとった、③ペンス副大統領が投票結果の「最終承認辞退」を求めたトランプ氏に同調せず、バイデン氏の当選を正式に認定した。

 その後は、ジョージア州検察がトランプ陣営による一連の選挙結果転覆工作について「組織的でかつ重大な犯罪行為」だとして、トランプ、チェスブロ、ジュリアーニ各氏ら関係者19人を41項目に及ぶ罪状で起訴に踏み切ったことは、すでに報じられた通りだ。

 このうち、チェスブロ氏は、検察側による大規模な捜査と関係者多数の事情聴取の結果、このまま裁判に臨めば極めて不利な立場に追い込まれるとの判断の下に、公判に先立ち、1項目の「共謀」に限って有罪を認め、①5年の保護観察処分、②罰金5000ドル、③コミュニティ勤労奉仕100時間――という司法取引に応じることになった。同時に、取引の一環として、今後の公判でトランプ氏ら他の被告にとって不利な証言にも応じることを検察側に約束した。


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