シカとイノシシで120万頭
一方でシカやイノシシも駆除されているが、両者合わせると100万頭をはるかに超える(2020年で約120万頭)。ところが仕留めた個体のうちジビエなどに使われるのは1割程度だ。大半は山に埋められる。ところが、それを掘り起こして食べるクマも多いのだ。こうして肉食の味を覚えたクマも増えているのではないか。
餌が豊富なら、それで栄養を付けて出産数も増えるだろう。子グマも成長しやすいし、冬眠明けに生き延びる確率が高まるかもしれない。そうした複合的な要因で生息数を伸ばしているように想像する。
若いクマは、新たなテリトリーを求めて移動する。とくに今年のように山の木の実が凶作だと、いっそう餌を求めて遊動域を広げる。人の居住空間に侵入しやすくなるだろう。
狙われるのは、農山村だけではない。今後は都市に侵入してくるクマが多く出ることも想定すべきだ。すでに北海道なら札幌のような大都市、東北・北陸地方でも県庁所在地など数十万の人口を抱える都市にも出没するようになった。いわゆるアーバン・ベアだ。
都市への侵入は意外と簡単だという。公園などの緑地帯や河川などを伝わると、見つからずに移動できるからだ。
クマの駆除に対して批判する声も絶えないが、その電話やメール主のほとんどが都市住人のようである。だが、今後は彼らの身の回りにもクマが姿を見せる可能性はある。
それでは、どうすればよいのか。人里に出てきた個体は駆除せざるを得ないが、人間側も、山岳地帯に入る際はクマを近づけない予防と防護が必要だと認識すべきだろう。
クマも太古の昔から日本の森に暮らしてきた生き物だ。お互いが棲み分けるためには、難しくても真剣な舵取りを取っていくしかない。