サッカー・Jリーグの開幕時期を現状の2月から8月へ移行し、翌年の5月に閉幕する「秋春制」の導入について、Jリーグ実行委員会が14日に開かれ、全60クラブのうち、52のクラブが事実上の賛成を表明した。19日に開催される理事会で過半数の賛成が得られれば、2026年開幕シーズンから秋春制となる見通しだ。
秋春制への移行は、アジアでトップチームを決めるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が開催時期を移行したことにより、議論が再熱。欧州諸国のリーグ開催時期に合わせることで選手の移籍をスムーズにすることをメリットとしている。ただ、冬の時期の試合が増えることから、寒冷地を中心に雪や寒さへの対策で選手にとってもサポーターにとっても負担が大きくなることが懸念される。
Jリーグは創設当時から地域とともに発展を図っており、地域社会もリーグの発展に恩恵を受けてきた。ただ、今や「地域に寄与するスポーツ」はサッカーに限らない。今回の秋春制への移行を機に、リーグも地域もスポーツと地域の関係性について考え直す時が来ているのかもしれない。
耳を傾けるべき「反対」の声
実行委員会の賛否では、「移行を実施することを決め、残された課題を継続検討する」が52クラブ、「現段階では移行を決めず、数カ月の検討期間を目安として継続検討する」が7クラブ、「移行を実施せず、継続検討をしない」が1クラブだった。この「反対」へ1票を投じたのは、J1アルビレックス新潟だ。委員会後に中野幸夫社長が報道陣へ明らかにしている。
中野社長は、Jリーグが秋春制への移行を「前向きに検討」とした10月から、明確に反対を表明していた。主な理由は冬のトレーニング環境の整備、冬に降雪の影響で試合が開催できなくなること、冬のアウェイ連戦で長期の遠征が続く可能性があること、他の競技との兼ね合いで冬季以外のスタジアムの確保が困難であること、等である。
秋春制では、リーグ開催時期を現行の2月~12月から8月~5月へと変更となる。Jリーグチームのホームスタジアムのほとんどがサッカー専用施設ではなく、陸上競技やラグビー、中高生のサッカー、地域イベントなど別の用途でも使われている。1シーズンのホーム試合があまり多くないサッカーは、サッカー専用施設では収益確保が容易でないからだ。Jリーグ所属チームであっても多くが、他の用途での利用できる施設を基本とし、利用をほかの用途と調整することは避けて通れない。
試合の開催日が変更となれば、他のスポーツやイベントのスケジュールも見ながら調整しなければならない。多くのスケジュールが年度や年間という単位で決まってくるので、Jリーグがシーズン終了後の5月になってようやく次シーズン開幕の8月にかけて試合日程が決まるということでは、調整が難航してしまう可能性が高いのだ。
特に、非三大都市圏の中では比較的大きな都市にある施設ほど、利用したい他の用途も多く、競争率は高くなってしまう。アルビレックス新潟が秋春制に反対する背景には、比較的人口の多い新潟市においてデンカビッグスワンスタジアムという代替が難しい施設を使っていることもあろう。
また、秋春制においては、12月~2月にウインターブレイク(WB)を設けるとしているものの、雪国では、その期間外でも残雪など雪の影響を受ける。これは、スタジアムだけでなく、スタジアムへのアクセスも影響を受けるので、サポーターの足が遠のき、収益を減らす可能性もある。また、WBの影響でそれ以外の期間において土日よりも集客が低くなる平日開催の試合が増えれば、年間の観客動員数に影響を及ぼすだろう。