2024年11月22日(金)

都市vs地方 

2023年12月19日

 WB中といってもシーズンオフではなくシーズン中であるため、雪国のチームは練習場を確保するために温暖な場所でキャンプする必要も出てくる。その移動や費用のコスト、さらには家族や友人と離れた場所での長期滞在が必要になる心理的負担など、ホームスタジアムで練習を続けられるチームとの差が出てしまうことも見逃してはならない。

もはやJ1のための秋春制

 こうしたアルビレックス新潟が指摘する反対理由は雪国のチームだけに該当するわけではない。「地域密着型」を標ぼうするJリーグは、その運営に自治体が密接に関係している。大幅な試合日程の変更は自治体や地域住民を悩ませることになる。

 また、冬の季節での試合についても、ピッチの芝の管理や観客席での寒さ対策など新たに検討しなければならないことが出てくる。このコストを国や自治体に求めるのは、昨今の厳しい財政状況を鑑みると、難しいと言わざるを得ない。Jリーグでは雪国チームのための負担増加が検討されているようだが、その負担額は明確ではなく、妥当であるかどうかわからない段階で、雪国チームが秋春制への賛否を表明しなければならないのは酷な話でもあろう。

 秋春制への移行に対して運営手法の転換やスタジアムの改修などのインフラ整備は、多くの観客動員数やグッズ売上といった一定の収益を見込めるJ1をはじめとした人気チームは対応し得るだろうが、売り上げ規模の小さいJ2やJ3のチームにとっては、シビアな判断を求められると言える。

 また、秋春制は欧州のリーグと合わせることになり、今後は欧州のチームへの選手の移籍が増加して、日本代表をはじめとするトップレベルの選手には恩恵が大きそうだ。その反面、欧州に移籍するような選手が少ないJ2やJ3のチームにとっては、日本代表や欧州に移籍したトップレベルの選手への人気の高まりを通じてJ2やJ3の人気が上昇してくれない限り、欧州などとシーズンスケジュールを合わせる効果は減じられる。

「おらがまちのチーム」がサッカーでいいのか?

 Jリーグの秋春制移行は、Jリーグの「地域密着」にどのような影響をもたらすのであろうか。特に、全国トップレベルの選手を抱え、Jリーグで上位となり、ACLを通じて世界でのチャレンジを目指すよりも、「おらがまちの代表」的な意味合いを強く打ち出してきた、J2、J3のチームにとってはどうであろうか?

 Jリーグが創設されて30年が経過しているが、創設当時に圧倒的な人気を誇っていたのは野球であった。野球のプロチームはわずか12チームと限定的であるものの、屈指の人気を誇る高校野球が「おらがまちの代表」を務めていた。しかし、高校野球は春と夏に盛り上がるものの、年間を通じて盛り上がるとはいえなかったこともあって、Jリーグはおらがまちの代表として非常に適したコンテンツであった。

 地域活性化を目指す自治体が公金での支援も含めてJリーグに飛びついたのも無理はない。その結果、Jリーグが60チームまで拡大して、さらにJリーグへの昇格を狙う日本フットボールリーグ(JFL)16チーム、都道府県単位の地域リーグ135チームにまで膨れ上がっている。

 このJリーグの成功は他のスポーツの模範となった。今では、野球やバスケットボールといった他の競技のスポーツチームも「地域密着」で運営を始め、市民に力を与えている。

 特に、日本代表人気が高まりつつあるバスケットボールは室内で開催できることで天候に左右されないという利点がある。また、バスケットボールの施設は比較的小さいことも利点であり、他のイベントでの利用がしやすいことに加えて、実際にプレーしている選手と観客の距離が近い。

 例えば、世界で屈指の人気を誇る米国バスケットボール「ロサンゼルス・レイカーズ」は、日本人の八村塁選手が属していることもあって日本での知名度も上昇中であるが、その本拠地の収容人員2万人弱で、同じロサンゼルスを本拠地とし、先ほど大谷翔平選手が移籍したメジャーリーグベースボール(MLB)のドジャースの本拠地(収容人員6万人弱)よりもかなりコンパクトである。筆者は野球やサッカーの見学経験の方が多いが、実際にレイカーズの試合を本拠地で観た経験でいえば、高い臨場感が得られ、非常に満足度が高かった。


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