2024年12月22日(日)

勝負の分かれ目

2023年9月5日

 日本バスケ界が多いに盛り上がっている。日本とフィリピン、インドネシアによる史上初の共催となったバスケットボール男子のワールドカップ(W杯)で、日本代表が2024年パリオリンピック(五輪)出場権を獲得した。21年東京五輪は開催国枠だったため、自力では48年ぶりの快挙だ。

(Pixfly/gettyimages)

 リーグが分裂状態だった10年前からは考えられず、今後の普及にも期待が膨らむ。一方で、今大会で日本が負担する運営費は約40億円。日本バスケットボール協会は、過去にW杯の前身の世界選手権で多額の赤字を抱えたことが、内部分裂の引き金となっただけに、財政面という「もう一つの戦い」でも負けられない。

日本の快進撃の裏で起きていた「空席問題」

 決勝トーナメント進出こそ逃したものの、1次リーグでアジア勢唯一の1勝を強豪のフィンランドから挙げた日本代表は、東京五輪では日本女子を銀メダルに導いたトム・ホーバス監督のもと、17~32位の順位リーグで2勝をマーク。NBAでプレーする渡邊雄太選手を擁し、2日のカーボベルデ戦では富永啓生選手(米・ネブラスカ大学)が3点シュート(3P)を驚異の成功率75%で沈め、身長172センチの司令塔・河村勇輝選手(横浜BC)が躍動。ジョシュ・ホーキンソン選手(サンロッカーズ渋谷)はリバウンドなど献身的なプレーで日本のゴール下を支えた。日本の真骨頂である「チーム一丸」でつかんだ五輪切符だった。

 大会は暗雲漂う幕開けだった。日本代表の開幕戦となった8月25日のドイツ戦で浮き彫りになったのは「会場の空席問題」。収容約8000人のアリーナはチケットが完売していたにもかかわらず、一部のエリアで空席が目立ち、観戦者が6397人にとどまった。

 報道によれば、ホーバス監督は「試合前に満席と聞いたんですけど、あれは満席じゃない。うちのベンチの前に誰もいない。何で?」などと疑問を投げかけたという。

 渡邊選手も試合翌日に自身のX(旧Twitter)で「昨日の試合のチケットは完売で、チケット欲しくても手に入らなかったって人たくさんいるって聞いてるのに、ベンチ前の席ガラガラだったの意味がわからなすぎる大人の事情らしいけど、来ない人にチケット配るなら、ほんとに来たい人に売ってあげるべきでしょ(原文ママ)」と不満を訴えると、多くのいいね!が寄せられ、「これはもったいない」「行きたかった」などのコメントが多数寄せられた。

 スポーツニッポンのWEBサイト「スポニチアネックス」は、「試合終了時点で現場の運営担当も理由を把握できておらず、国際バスケットボール連盟(FIBA)に確認中。開催国の初戦とは思えない状況に、世界のメディアからも問い合わせが殺到しているという」との記事を掲載。FIBAも8月26日に、W杯のエグゼクティブーディレクターのデービッド・クロッカー氏の名前で「複数の法人により購入された座席で、理由は不明ですが昨日開催された試合に来場されませんでした。現在この件について調査を行っており、以降の試合において同様の事案がなきよう、最善を尽くしてまいります」とコメントし、日本協会もFIBAとこの問題を協議していることを明かす事態となった。

 FIBAの最終的な見解を待つまでは本当の理由は判然としないが、スポンサー企業に配られたチケットに対し、沖縄で夜の21時10分から試合開始という地理的、時間的な制約から観戦が見送られた席が多かったのではないだろうか。


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