2024年7月27日(土)

勝負の分かれ目

2023年9月5日

 関係者によると、W杯直前に東京で開催された日本代表の強化試合でも、スポンサー枠で用意した席が埋まらず、近隣の高校生のバスケ部員らに「動員」をかける連絡があったという。ただし、これは今回のケースに限らない。海外の国際大会などでも、会場の「見映え」をよくするためや、選手たちへの配慮から会場関係者らを動員することもある。

 25日のドイツ戦で、自国開催を日本の「バスケファン」が観戦機会を失ったことは残念でならないが、27日のフィンランド戦では急遽、一部チケットの追加販売を実施。インターネット上では、公式なアナウンスがないままでの追加販売に批判の声があったものの、運営側の迅速な対応だったといえるだろう。渡邊選手も「昨日の雰囲気最高でした」などと感謝の気持ちを投稿した。

運営費をどう賄うか

 今回のW杯の日本会場となる沖縄アリーナでは、日本戦を含む1次リーグと2次リーグの計20試合を実施。世界的なスポーツの注目度は高く、国内外から多くの観戦客やメディアが現地を訪れた。

 世界中のテレビ視聴者が30億人以上とされる一大スポーツイベントだけに、大会期間中は延べ13万人の観客が見込まれる。日本協会によれば、沖縄県内の経済波及効果は約62億7200万円だという。

 一方で気になるのは、運営に関する支出面である。

 開催約1年前の昨年8月26日付・朝日新聞朝刊によれば、日本協会が計上した運営費は約40億円にのぼる。捻出する運営費の内訳は、スポンサーとチケット収入で8億~9億円を確保できる見通しとなっているほか、開催地の沖縄県と、アリーナがある沖縄市が合わせて約6億円を負担。さらに日本スポーツ振興センターの助成2億円に、協会も3.5億円を負担することになっている。

 日本協会は昨年5月、超党派の国会議員によるバスケットボール議員連盟に対し、今大会の財源確保などで支援を要請したが、大会が開幕するまでに、残る財源をどう確保したかという報道はない。沖縄の地元紙である沖縄タイムスは昨年7月の同紙ウェブ版で「バスケ沖縄W杯 収支不安 06年大会13億円赤字 日本協会 財政難」との見出しの記事を掲載した。

 記事の中では、日本協会の21年度決算が、東京五輪後に開催された国際大会の運営費や、その大会でのコロナ対策などで支出がかさみ、約5億8000万円の赤字となり、正味財産は約1億1000万円まで減少したことを指摘。協会が拠出する自己財源から約3億5000万円についても、「資金不足に陥ればさらなる負担は必至で、協会の財政を直撃しかねない」と指摘している。

 世界選手権での巨額赤字によって大混乱を招いた「苦い過去」を教訓に、大会招致を実現させた日本協会だが、財政状況は潤沢ではなく、厳しい状況にある。


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