2024年7月16日(火)

都市vs地方 

2023年12月19日

 Jリーグは全国津々浦々にチームを設立、運営させることによってリーグと地域を発展させてきたが、日本の現在の経済状況や秋春制を考慮すれば、地域振興の担い手をサッカーから他のスポーツに力点を置くようになる地域が出てきてもおかしくないだろう。事実、今回唯一の反対を表明したアルビレックス新潟は、サッカー以外に、バスケットボール、野球、スキー・スノボ、モータースポーツなどでもプロチームを持っている。そのうち、野球はついに2軍への参入が決まり、60年以上続いたプロ野球12球団体制の大きな変更となった。

 アルビレックス新潟の運営母体は主に専門学校を経営している会社で、創業者は地方創生関連の各種委員会の委員も務めており、地域振興に造詣は深い。新潟におけるスポーツによる地域振興について、サッカー以外のスポーツも大きな選択肢になろう。

学ぶべき札幌冬季五輪招致での〝失敗〟

 こうした地域の気候や経済状況、まちづくりによって行うスポーツを取捨選択するのは、サッカーに限ったことではない。札幌市が冬季オリンピック・パラリンピックの招致活動を「停止する」と表明したが、実は招致のやり方に大きな課題も見られた。

 冬季五輪の競技は大きく分けて、雪の上でやるもの(スノー)と、氷の上でやるもの(アイス)があり、それぞれ競技施設の作り方も地域の人気も大きく異なる。札幌でいえば、スノーは市内にスキー場があり、札幌の夜景が楽しめる都市型スキー場として大きな人気があり、また近隣には国際的な人気を誇るニセコもあるものの、アイスはその土壌が少なく、施設もジャンプ、カーリング以外では目立たない。

 札幌では学校もスキーの授業が基本だ。それゆえ、オリパラの招致計画書では「大都市スノーリゾートとしてのブランドを確立」が協調されている。

 今やアイス系は屋内施設がほとんどであり、それゆえ地域を選ばない。例えば、アイス系屈指の人気を誇るフィギュアのトップ選手はほとんどが本州の大都市周辺を普段のリンクとしているし、興行も大都市中心に行われている。また、北米4大スポーツの一つであるアイスホッケーのプロリーグNHLの本拠地は雪の全く降らない南部の大都市も少なくない。前述のレイカーズの本拠地はアイスホッケーチーム「ロサンゼルス・キングス」の本拠地でもある。

 そのため、アイス系の競技は、降雪にかかわらず集客が最大化できる大都市の既存の施設で開催し、降雪が必要な屋外施設となるスノー系は降雪地域というのが、冬の巨大スポーツイベントの潮流となりつつある。例えば、冬の国体では2013年が東京(アイス系)・秋田(スノー系)で開催された。

 また、オリパラでいえば、前回の22年北京大会はアイス系が北京で、スノー系の多くは北京から200キロメートル離れた「張家口市」で開催。26年は、アイス系がミラノ、スノー系がミラノから400キロメートル離れたコルティナダンペッツォで開催される。

 アイス系の屋内施設の新設、改装には巨額の公費負担が避けられず、冬のオリパラの大きな課題となっている。実際に、1998年の長野オリンピックのアイス系施設の多くがその後の活用に難点を抱えている。

 札幌のオリパラ招致で課題の一つとなったのは、アイス系の施設として改修されて使うとされた新月寒体育館である。札幌市はオリパラ招致に関わらず整備するとして、オリパラ向けの過剰施設という批判に反論していたが、世論の反発の一因になったのは否めない。


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