2024年5月19日(日)

新しい〝付加価値〟最前線

2023年12月29日

「ザクティ」と「アクア」が「継続」に強かった理由

 ここまで話での共通項は、元々あった事業部から、ほとんどの人が欠けずに新しい会社へ移ったことがあげられる。特に、洗濯機事業部は、洗濯分野を広く浅くではなく、広く深く極めた人が多かったという。

 そのような人材が数多く育った理由は、アイディアを出し、それを「やってみなはれ」とする土壌が三洋にあったからだと聞く。どんどん挑戦させ経験を積ませたそうだ。ちょっと古いが大阪万博の「人間洗濯機」もそんな感じだ。しかし、インタビューの席では、三洋が倒産した理由もそこにあったと言われた。メーカーに勤務した人から経験していると思うが、開発と営業は、結果を出さない限り意味がない部署。開発は売れる商品ができない限り、営業は売れない商品を売ってこない限り、ただ飯喰らいと誹られても言い訳できない。

 しかし経験は大きな力。技術もそうだが、失敗、倒産というありがたくない挫折経験でも、乗り越えた後、人はものすごく強くなる。信じたことを、やり続けることができるのだ。

「ザクティ」と「アクア」は、そういう背景を持つ人が集団でいるわけで、これは強い。信玄が言うところの「人は城、人は石垣、人は堀」である。あとは勝てるパターン(ビジネスプラン)を見出せるかどうか。こちらは経験則だけではどうにもならない。経験に依存すると一度勝ったパターンを繰り返し、ドツボにハマることがよくある。

 それはさておき、「ザクティ」と「アクア」の洗濯機事業部が強いのは、三洋電機の経験を持ったメンバーが集団で残っていたからということ。それに加えて、新しいメンバーが方向性を変えるには重要だ。「ザクティ」は、ビジネスの方向を変えるための新しいスタッフが、「アクア」は、各国の研究所から厳しくはあるが、有益な意見が寄せられる。

 今までよく、誰それていうキーマンがすごいという話が紹介されてきたが、改めて「人の集」の力は重要だと認識させられた。「集団力」はもっと見直されてもよい、日本らしい「力」ではないだろうか。

   
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