また、今回の選挙は、司法府による重要な判断が絡む異例の選挙でもある。米国の司法機関が適正な判断を下し、米国の民主制度の強靭性を示すことが期待される。
トランプは、20年選挙に関連して4つの重要な刑事裁判の当事者になっており、その内最低「1ないし2」で有罪判決が出るのではないかと見られている。さらに23年12月、コロラド州最高裁は、21年のトランプ勢力議会乱入に加担したとして、憲法修正第14条3の規定を根拠に、トランプには今年の予備選立候補資格がないと決定したが、これに対してトランプは上訴し、2月8日には最高裁で口頭弁論が行われる。トランプの立候補資格については、23年12月にメーン州の州務長官も資格はないとする判断を出しており、同様の訴えは全米50州のうち半数以上で起こされているという。
最近の世論調査(ワシントン・ポスト紙とメリーランド大学の調査)によると、トランプへの同情が増えているとも理解される結果が出ている。トランプ第二期の恐怖は、通常の米有権者の心に重く圧し掛かっているはずだと思うが、トランプ側のナラティブが浸透しているようにも見える。民主党側の努力不足、有権者の移り気なのか、あるいは世論調査に有権者が正直に答えていないのか、分からないが不気味である。
この社説に呼応するかのように、1月5日バイデンは、ペンシルベニア州のブルー・ベルでの演説で、来る選挙は米国の理想を守る候補者と私欲のためにそれらを投棄し混乱を引き起こさんとする候補者の間の選択だとして、トランプを激しく非難した。その中で「前大統領」は内乱を指示したと糾弾し、「今度の選挙には民主主義が掛っている。あなた方の自由が掛っている」と強調した。なお最近、選挙動向を心配するオバマがバイデンと会談し、責任者の配置等選挙推進決定体制を強化する必要がある等と指摘したという。
カギを握る副大統領候補
バイデンと民主党には、プランBがないとの指摘もある。バイデンと民主党につき唯一心配があるとすれば、バイデンの高齢である。
バイデンが勝利する場合も、向こう4年につき不安を覚える有権者は多いだろう。それ故、副大統領の指名が極めて重要になる。
副大統領には何時でも大統領になれる、確実に良い人物を指名することが重要だ。バイデンも民主党もそのことは十分わかっているだろう。
愈々予備選が始まる。1月15日のアイオワ州共和党集会、23日にはニューハンプシャー州共和党予備選、2月3日民主党サウスカロライナ州予備選、24日共和党同州予備選、27日ミシガン州予備選、3月5日スーパー・チューズデー等と続く。そして7月15∼18日ミルウォーキーで共和党大会、8月19∼22日にシカゴで民主党大会が開催され正式候補が決定する。その後、大統領候補者等の討論会等を経て、11月5日に本選挙となる。