2024年7月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年11月7日

 この論には賛成です。ただ、その理由はもっと具体的であり、中国の軍備拡張がこのまま続いた場合、局地的であっても、真にアメリカの優位を脅かすには、早くてあと数年、常識的に考えて10年はかかると思うからです。

 予算強制削減の期間の10年はギリギリのタイミングではありますが、そのうちに米国では政権の交代もあるでしょうし、国防政策の何らかの見直しが行われることも予想されるからです。

 西太平洋の空母機動部隊の脅威となる中国のASBMの実戦配備には、早くて数年はかかるでしょうし、中国の空母機動部隊数個が西太平洋を游弋するには少なくとも10年はかかるでしょう。

 また、現在予見し得る将来、ある程度以上の戦争は、中国かホルムズ海峡周辺の海域であり、陸軍を必要とするケースは想定できません。

 それならば、陸軍の師団と基地の大幅削減が可能になります。極論のようですが、石原莞爾の戦争変遷論もあります。かつては軍隊同士の短期の戦争だったのが、フリードリッヒの時に長期戦となり、ナポレオンの時に短期決戦に戻り、第一次大戦では国家総力戦となりましたから、次の戦争は超近代兵器による短期戦でしょう、という史観です。戦争の形態は変わるものであり、次の戦争は陸軍の要らない戦争の可能性もあります。

 陸軍削減の前例としては、4個師団、16ヶ連隊削減の宇垣軍縮の例があります。それは、陸軍近代化の資金捻出のためでした。

 他方、武器技術の進歩は日進月歩であります。アメリカがこれに遅れた場合は、日本の安全保障にも重大な影響があります。他の何を措いても、是非その優位だけは維持して欲しいと思います。

 オバマ政権が喧伝する「アジア回帰」に対テロ戦争のための動員態勢解除という性格があることに着目することも必要です。現に、アフガニスタン及びイラクに展開している兵力はピーク時の約23万人から10万人以下に減少しつつあります。対テロ戦争のために動員された陸軍及び海兵隊を平時態勢にまで削減することを皮切りに陸上兵力を大幅に削減することは可能でしょう。

 ともあれ、サイバー、宇宙、対潜水艦戦、ミサイル防衛など重要な分野において、米軍が、いかなる国にとっても追随することなど想像すらできないような近代化を進めてくれることが極めて重要であり、日本として協力すべきであって、またそれが可能な分野もあると思います。

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