2024年12月10日(火)

デジタル時代の経営・安全保障学

2024年3月5日

ガザ攻撃に利用されるAIターゲティングシステム

 イスラエル国防軍によるガザへの攻撃には「Habsora」(英語での名称は「The Gospel(福音)」)と呼ばれるAIターゲティングプラットフォームが使用されているとホームページに紹介されている。戦争においてAIを活用しようとする試みは世界中の国々で研究されているが、標的を定めるターゲティングシステムの精度を高めるには膨大なデータが必要となる。

 「The Gospel」の場合は、ドローンや衛星、航空機から収集した監視映像、そして通信傍受した通話記録やピコセル(ショッピングモールなどの狭い地域をカバーする小型セルラー基地局から得られた情報)、そして携帯電話やタブレット、ラップトップコンピュータ、監視カメラや防犯カメラの情報をもとに標的が設定されているようだ。

 国際的にも批判を浴びているイスラエル国防軍のガザ地区の病院や学校への空爆、そしてイスラエルが誤射と説明する民間施設への攻撃は、全てAIの指示によるものかも知れない。AIの判断には人道的配慮などというものは微塵もあり得ないのか。イスラエルはガザをモデルにAIターゲティングシステムを試しているようにも見える。

携帯電話の盗聴は他人事ではない

 AI技術の戦争への応用は確実に進んでいる。携帯電話の盗聴などというと自分とは縁遠い存在に見えるかもしれないが、AIは膨大な数の携帯電話の監視を可能とする。そしてそれらの情報は、AIの分析技術によって有事の際に強力な武器となるのである。

 日本は、憲法第21条に定められた「通信の秘密は、これを侵してはならない」という言葉に縛られ、ターゲティングシステムの研究などはもっての外だが、せめて、国会議員や自衛隊員の携帯電話は、すでに盗聴されていることを前提にした利用に努めてもらいたい。ナスララ氏の警告は海の向こうの話ではない。

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