地方テレビ局はどうなるのか
テレビとインターネットは「相克」とも言うべき微妙な関係の中で競合と融合を重ねてきておりその動きは今も続いている。そうした中で今後注目されるのが地方テレビ局の経営とその再編問題である。
キー局と地方局の関係は、番組放送枠を提供することで広告料の一部を分配金として受け取るというビジネスモデルだが、地方局は自らも地域で「稼ぐ力」を一段と強化する必要がある。過疎化や少子高齢化の影響もあって、地方テレビ局の経営環境は地域ごとに異なっており、それぞれに課題がある。体力のあるところもあれば振るわない地域もある。
こうした中、一般の企業再編と同様に、地方テレビ局についてもいくつかの再編案が民放側から示されている。例えば放送エリアを超えた系列局の統合であったり、持ち株会社方式を活用した再編案だったりと多様だ。それらの詳細は本書に詳しく解説されているが、今後キー局ごとのネットワーク戦略の中でそれぞれ適切な手法が見出されてくるのだろう。
感じさせるテレビマンの気概
本書がテレビをめぐるさまざまな動きを紹介する中で、終始一貫しているのは、「テレビは簡単には終わらない」という確固たる精神である。著者はテレビ局出身だけに、記述内容はプロ目線に徹しており、一つ一つの記述が詳細で鋭い。
オワコン(世間的に終わったと見られるコンテンツ)批判や、若者のテレビ離れが近年指摘されているが、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)やオリンピックなど世の中の関心を集めるビッグイベントの際には、多くの人々がテレビ中継を視聴し、固唾を飲んで画面を見つめる。著者がそう紹介するようにコンテンツによる強大な結集力がテレビの真骨頂である。そこでは「テレビに終わりはない」という信念が貫かれている。
著者の指摘するように、テレビはこれからもその特性に加えて、多くの知恵と豊富な経験をいかして新たな地平を開いていく可能性がある。本書はそうしたテレビマンの矜持を感じさせる力作である。