2024年5月13日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月26日

 モルドバを唯一守っているのはロシア軍がヘルソンから西に進撃することを食い止め、黒海においてロシア海軍を押しとどめているウクライナである。これによって、モルドバはロシアからの軍事侵攻の差し迫った脅威から遮蔽されている。

 モルドバの次の大統領選挙は今年の秋である。プーチンはいつものことながら、ロシア語話者が多い地域において、騒ぎを引き起こそうとしている。もしも、ウクライナが倒れたら、モルドバがクレムリンの次の目標となる可能性がある。

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モルドバの“立ち位置”

 このところ、欧米メディアで「ウクライナの次」との文脈でモルドバに着目する論考が増えてきているが、これもそうした論考の一つである。モルドバは、日本ではなじみが薄いが、ウクライナとルーマニアに国境を接する面積3万平方キロ(九州よりやや小さい)、人口260万人の国である。

 歴史的に、オスマン帝国、ロシア帝国、ルーマニア、ソ連と支配者が入れ替わってきており、1940年以来、モルダヴィア・ソヴィエト社会主義共和国としてソ連の一構成要素であったが、91年にソ連の崩壊によって独立した。

 重要なのは、この社説でも取り上げられているとおり、トランスニストリア(沿ドニエストル)という地域で親露派による分離独立の動きがあることである。トランスニストリアはモルドバの独立に先立ち、90年に独立を宣言した。

 91年のモルドバの独立の後、92年に同地域の分離独立を巡って武力紛争に至った。停戦となったが、ロシア軍が平和維持のために駐留しており、モルドバ中央政府の実効支配が及んでいないという係争地域である。

 モルドバはロシアの勢力圏と欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)を基軸とする西欧諸国の狭間に位置する国である。モルドバは、94年の憲法上、永世中立を規定しており、ロシアと西欧との間でどのような立ち位置を取るかは常に難しい問題であった。


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