2024年5月13日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月26日

 22年のロシアによるウクライナ侵略はロシアに対する脅威感を増大させ、西欧への接近に軸足を移してEU加盟を申請した。モルドバはウクライナとともに、22年6月に加盟候補国の地位が認められ、23年12月には加盟交渉の開始が決定された。加盟の実現には、相当の年数がかかることが予想されるが、ともあれそのプロセスは動き出した。

 08年のジョージア、14年以降のウクライナと、このところのヨーロッパにおける戦争は、ロシアの勢力圏と西欧諸国の狭間に位置する国が西欧に近づこうとしたとき、ロシアが親露派の分離独立の動きを口実に軍事行動を起こし、それを阻止し、自らの勢力圏の拡大を企図するというパターンで起こってきた。モルドバは、そうしたパターンに当てはまる国である。

すべてはウクライナの戦況次第

 ロシアによる「ウクライナ後」の軍事侵攻があるかは、ウクライナでの戦局次第である。プーチンといえども、ウクライナで手一杯の中で別の国に手を出すことはハードルが高く、ましてやモルドバに侵攻するためには、ウクライナ西部を手中に収めることが必要になる。

 NATOにおいては、プーチンがバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)に侵攻することで、NATOの集団防衛の仕組みを突き崩そうとすることにどう備えるかの議論が盛んになされるようになっているが、それはいささかNATOに偏った視点というべきだろう。仮に「ウクライナの次」があるとすれば、真っ先に脅威に晒されるのは、NATO加盟国ではなくモルドバのような立ち位置の国であると思われる。ウクライナの戦況とともに、モルドバでの状況の推移に着目する必要がある。

   
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