日本の労働組合は企業ごとに存在し、個々の企業の実態に応じた労使交渉ができるというメリットがあります。しかしこれと同時に、企業の存続と利益がなければ、雇用が維持されず、労働組合自体が困る状況が生じます。それゆえ、近年、日本の労働組合は雇用維持を優先し、企業が賃金を上げないことを容認するなど、その役割が低下しています。
終身雇用制度も足かせに
このように、賃金に不満があるにもかかわらず、日本では労働者個人あるいは労働組合による賃金交渉が十分に行われておらず、さらには賃金の決定要因を理解していない労働者が3割もいるなど、労働者の賃金の当事者意識が低いことも賃金の低迷につながっていると考えられます。
最近の経済学の研究では、労働者は過去よりも賃金が下がることを嫌う一方で、賃金が下がらない限り、賃金上昇にそれほど執着しない傾向が明らかになっています。このような状況では、企業は賃金を一度上げると元に戻せなくなるため、賃上げに慎重になります。さらに、日本では終身雇用制度があり、正社員の解雇が簡単ではないので、賃金を上げた場合、下げることがさらに難しくなると考えられます。