ペンシルベニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州の3州
大統領候補者がどの州を重視しているかの指標のひとつは、訪問――その回数、機会や対象となる有権者がいる場所である。バイデン大統領のこれまでの訪問についてみてみると、7州の中でどの州を最重点州においているのかについて、はっきりとした傾向が見られる。
2021年1月の大統領就任時から23年12月までの3年間に、バイデン大統領はペンシルベニア州を32回、ミシガン州を8回、ウィスコンシン州を7回訪問した(図表2)。
ホワイトハウスがあるワシントンD.C.に隣接する南部メリーランド州とバージニア州および私邸がある東部デラウェア州を除けば、他州と比較すると、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州の訪問回数は多い。特に、前回の大統領選挙の勝敗を決定づけたペンシルベニア州の訪問回数は突出している。同州は、主として献金目的で訪問する東部ニューヨーク州と西部カリフォルニア州よりも訪問回数で上回っているのだ。
バイデン大統領は23年、ミシガン州で全米自動車労働組合(UAW)の集会やストライキのピケに参加した。対象としたのは、古くからの民主党支持層である労働組合員と労働者である。また、ウィスコンシン州では、黒人が経営する企業や黒人商工会議所を視察した。
大抵の州では、バイデン大統領の3年間の訪問回数は0回ないし1、2回である。例外は中西部オハイオ州で、ミシガン州とウィスコンシン州程度に訪問しているのだが、オハイオは前回の選挙で、トランプ前大統領が8.1ポイント差で勝利を収めた州である。3月16日に発表されたフロリダ・アトランティック大学の世論調査によれば、現在もトランプ前大統領がオハイオ州においてバイデン大統領を11ポイント差でリードしており、同州は今回の大統領選挙において激戦州に入らないだろう。
しかし、オハイオ州の訪問には全米に向けたアピールがある。例えば、バイデン大統領は、連邦政府からの補助金を受けて、米インテルが州都コロンバス郊外に建設する半導体工場の着工式に22年9月に参加したが、それは2022年8月に成立した半導体産業支援法の成果を全米に宣伝する絶好の機会と捉えてのことだった。