次に、英誌エコノミストと世論調査会社ユーガブの共同世論調査(24年1月28~30日実施)もみてみよう。この調査では、若者(18~29歳)の45%が「イスラエルがパレスチナ市民に対して大量虐殺を行っていると思う」と回答し、全体の31%を約15ポイント上回った(図表7)。同調査(同年3月10~12日実施)では、「貨物船から食料や水を載せた積荷を下すために、ガザ地区沿岸に桟橋を取り付けることに賛成か反対か」という質問に対して、55%の若者が賛成と答えた。
若者は、バイデン大統領が非常にイスラエル寄りであると見ている。その一因は、同大統領の発言にある。
ハマスのイスラエル奇襲攻撃に関連して、「私はユダヤ主義者だ。ユダヤ人でなくてもシオニストになれる」(23年12月5日)と強調して、イスラエルを全面的に擁護したからだ。
元来、パレスチナにユダヤ人による国民国家を樹立しようとする運動であったシオニズムを担うユダヤ民族主義者をシオニストと言うようだが、バイデン大統領はシオニズムから離れてユダヤ人を強く支持するメッセージを送りたかったのではないか。しかし、それはアラブ系や若者の強い反発を買ってしまった。
ちなみに、筆者とゼミ生は2月19日、広尾にあるパレスチナ総代表部を訪問し、ワリード・シアム大使にヒアリング調査を実施したが、同大使はバイデン大統領の上の発言を非常に問題視していた。
激戦州ミシガンの若者とアラブ系は11月5日の投開票日に、トランプ前大統領に投票しないかもしれないが、投票所に出向かなければ、それは民主党内のバイデン支持の票が減り、同前大統領に有利に働くことを意味する。この要素も昨年10月7日以降の新しい問題であり、これに対処しなければならない。
バイデン大統領にとって好ましくない数字が出ている。米CNNの世論調査(24年3月13~18日実施)では、ミシガン州でトランプ前大統領がバイデン大統領を8ポイントリードしたのである。
トランプ前大統領側からすれば、バイデン大統領のこの「3+1」のフォーメーションを崩すために、激戦7州の中で、第1にミシガン州、第2にウィスコンシン州での勝利を狙えば良い。事実、トランプ前大統領は今年4月2日、ウィスコンシン州を訪問する予定である。
いずれにしても、2024年米大統領選挙は、ペンシルベニア、ミシガンとウィスコンシンの3州で最終的に勝負が決することになるだろう。