2024年12月3日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年11月19日

 10月20日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、社説で、習近平政権が推進する反民主化運動は、北京大学内にも浸透し、今回、北京大学の夏業良教授が、その職を失うことになったことを、批判的に伝えています。

 すなわち、10月18日の緊急教授会を経て、北京大学は、経済学部のベテラン教授で民主化推進者でもある夏業良(Xia Yeliang)教授を2014年1月31日付で解雇すると本人に告げた。大学側は、教授が学界で十分な実績を上げていない事を解雇理由とし、教授には政治的理由であることを公の場で言わないよう警告した。政治的理由としないのは、共産党のいつものやり方である。

 中国共産党指導部から見れば、夏教授の罪には、民主主義マニフェスト「08憲章」に署名したことも含まれる。そこでは、政府の検閲を批判し、人民政府の理想を政府が支持することを訴えている。このような教授の姿勢によって、教授は拘留や自宅監禁されたこともある。現在は、習近平の反民主化運動の真っ只中であり、夏教授はその職を追われた。

 夏教授の解雇は、一つには、中国政府が神経質になっている証しである。役人達は、大学での言論の自由が共産党の支配を揺るがしかねないと警戒している。しかし一方、共産党は、このような強硬姿勢を取っても何の対価も払わずに済むだろうとのある種自信もあったのではないか。

 近年、北京大学は、世界中のトップ大学と提携を進めている。その中には、コロンビア、スタンフォード、LSE、ソウル等が含まれる。今のところ、夏教授の件に関して警告を発したのは、マサチューセッツ州にある1つのカレッジのみである。北京大学を訪問したロンドン市長も英国財務大臣も、夏教授の件に触れることはなかった。

 西側の指導者達が、中国の自由化を、中国側の説明だけで判断し続ける限り、夏業良教授のような民主化を求める人達への弾圧は、よりひどくなるだろう、と警告しています。

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 本年春の習近平体制発足以来、中国の社会主義体制の堅持、自由主義、民主主義に対する統制は、中国政府の公式の態度として打ち出されていますが、それが国内の言論統制にも反映されていることは明らかです。今回の夏教授の例もその1つでしょう。


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