2024年6月20日(木)

プーチンのロシア

2024年4月23日

 ロシア科学アカデミーによれば、同国では2023年に約480万人の労働者不足が発生していたという。ロシア経済は、中国やインド向けなど、欧米諸国の制裁を回避して行われた原油などの資源輸出増や、軍需産業への投資とみられる公共投資の拡大などを背景に、制裁による経済の落ち込みを抑え込んだ。すでに、回復フェーズに入っているが、労働力不足は新たな経済発展の芽を摘む結果につながるのは必至だ。

持ちつ持たれつのタジキスタンとの関係

 ただ、ロシアによる移民規制の動きは、ロシアでの出稼ぎ収入に依存するタジク経済や、同国を率いるラフモン政権に厳しい打撃を与えかねない。さらに同国の不安定化は、ロシアを標的とするイスラム国(IS)などのテロ集団の伸長につながりかねない矛盾をはらんでいる。

 タジキスタンは1991年に旧ソ連から独立したが、独立後に内戦が激化し、和平に至ったもののイスラム系野党は活動が禁じられた。90年代から続くラフモン政権は独裁体制を強め、深刻な汚職体質も指摘されている。タジクの1人当たりの国内総生産(GDP)は約1000ドル(約15万円)と、旧ソ連で最低水準にとどまっていて、GDPの約3割は、ロシアなど海外からの出稼ぎ労働者による送金とも指摘されている。

 そのように経済基盤がぜい弱なタジクにとり、ロシアによる労働移民の規制強化は深刻な脅威となる。ロシアは移民受け入れでタジク経済を事実上支えているほか、ロシア陸軍がタジク国内に駐留するなど、軍事・経済両面で深い関係を持つ。プーチン政権は、事実上ラフモン政権の後ろ盾といえ、そのような政権を窮地に追い込むことは、プーチン氏にとっても得策ではない。

 さらに、タジク経済の一層の悪化は、同国の不安定化を招き、ISのさらなる伸長と、ロシアへの流入増を招きかねない。ただ移民規制を強化しなければ、結局はそれも、ロシアへのISの流入増を引き起こす結果につながる。

 タジクなど中央アジアやロシア南部のカフカス地方はもともと、〝ソ連の柔らかい脇腹〟と呼ばれ、ロシアにとり慎重な対応が求められる地域だ。ロシア経済は欧米の制裁網をかいくぐり成長が加速しつつあるが、戦争を背景にした労働力減少という思わぬ弱点をさらけだした格好だ。

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