2024年4月19日(金)

安保激変

2013年12月9日

 しかし、今日では、中国が毎日のように尖閣諸島周辺に政府公船を送りつけるなど、日本の領土が直接脅かされる状況が続いている。このような状況では、日本自身が盾も矛も持って主体的に国家の防衛に取り組み、米軍の支援を受けるという新しい役割分担が必要となる。

 そこで、日本が最優先で取り組まなければならないのが、中国が海洋進出を推し進める南西諸島地域の防衛だ。南西諸島防衛は10年に民主党政権が出した防衛計画の大綱で打ち出され、那覇基地の戦力強化、潜水艦戦力の増強、与那国島への沿岸監視部隊の駐留などが進められてきた。だが、昨年日本政府が尖閣諸島の一部を購入して以降、東シナ海をめぐる情勢が悪化したため、安倍政権は大綱を再度見直して、南西諸島により強固な防衛網を築こうとしている。

 7月に発表された中間報告では、機動展開能力等の着実な整備のため、部隊・装備の配備、統合輸送の充実・強化や民間輸送力の活用、補給拠点の整備、水陸両用部隊の充実・強化等について検討されることが示された。陸上自衛隊が検討している水陸両用団の創設やオスプレイの導入は、このような文脈で理解される必要がある。

 これらの措置は、南西諸島での災害救援にも有用だ。南西諸島は台風の被害を最もよく受けるだけでなく、地震と津波の多発地域でもある。

 1771年の八重山地震では最大85メートルの大津波が八重山地方を襲い、1万2千人規模の死者が出た記録が残っている。八重山地方には津波によって陸に揚げられた大石が今でも散見される。首都直下型地震や南海トラフ巨大地震だけでなく、南西諸島における大規模災害にも備える必要がある。

 近年、軍が災害救援で果たす役割に注目が集まっているが、それは軍がその自己完結能力によって、大規模災害の被害を受け、インフラが崩壊した地域でも支援活動を行うことができるからだ。指揮命令、通信、水陸両用能力、補給、医療支援、捜索救難などは、災害救援でも欠かせない要素である。

 言い換えれば、効果的な災害救援を行えない部隊には、国を守ることもできないのだ。

 南西諸島の防衛と災害救援に関して取り組みが大きく出遅れているのが、南西諸島に点在する民間の空港や港湾施設の活用だ。南西諸島は1200キロにわたって広がる。これは日本本土とほぼ同じ長さだが、このエリアに、現在自衛隊の実働部隊の拠点は沖縄本島にしかない。

 東日本大震災における救援活動から得られた教訓は、部隊の機動展開能力とそれを支える拠点なしに効果的な作戦は行えないということだ。南西諸島の災害救援や防衛態勢を考えたときに、有事即応や本土からの増援を受け入れるには、現状ではあまりにも心許ない。南西諸島は防衛だけでなく、災害救援に関しても空白地帯であり、拠点の増強が必要だ。


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