『葉隠』は単純なる黙読をすすめているのではなく、書物に対する武人の姿勢についても語っているのである。日本人にとって腹とは多様な意味をもっている。腹にまつわる言葉を拾ってみただけでもわかる。切腹、腹心、腹芸、腹案、立腹などといろいろな使い方がある。
ビジネスマンにとって、読書は欠かせない自己啓発の一つである。
書の道は紙・筆・墨が一体
習字が小学生の間でも盛んである。筆をもって一点に精神を集中することは、心の鍛錬にも役立つ。しかし、ただ手を動かしていればよいというものではない。書を教える者は、それなりの修行をしておかないと、ただの形をまねるにすぎなくなってしまう。
「物を書くは、紙と筆と墨を思ひ合う様になるが、上りたる。」と一鼎申され候。はなればなれになりたるがなり。
物を書くには、紙と筆と墨とが一体となるのが上達したということであると、一鼎が申された。とかく、それが離ればなれになりたがるものである。
教育上は智・徳・体を三位〔さんみ〕といい、これが一体となってはじめて人格が形成される。しかし、とかくどちらかに偏りがちであるのが現実である。
書道においては、紙・筆・墨とが三位である。これ自身は道具としてバラバラなものであるが、書く人によってそれが一体となるのである。つまり、精神の問題にまで昇華させる心のはたらきをいうのである。
魂の入らない学問は迫力がない。ビジネスマンにとって、話すことと書くことは重要な要素である。上手・下手というより、そこに込められている気迫というものが人を動かすのである。