2024年7月16日(火)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2024年5月7日

「NX総研短観」から見るトラック運賃指数

 NX総合研究所では、企業物流の最新動向を把握することを目的に、四半期ごとに製造業、卸売業の主要2500事業所を対象に業況判断指数(DI、Diffusion Index)調査を行い、700~800社から回収した回答をもとに「企業物流短期動向調査」(NX総研短観)として、以下のコンテンツを発表している:

① 国内向け出荷動向
② 輸送機関別利用動向
③ 輸出入貨物の動向
④ 在庫量と営業倉庫利用の動向
⑤ 運賃・料金の動向
⑥ 物流コスト割合の動向

 上記の⑤のうち19年1~3月から24年1~3月の間のトラック運賃指数の動向を追ってみたところ、下図の通りとなった。

 調査対象の各事業所には、過去3カ月間のトラック運賃が値上がりしたのか、値下がりしたのか、現状維持だったのか、向こう3カ月に値上がると予想するか、値下がると予想するか、現状維持と予想するかを回答してもらい、値上がりと回答した事業所の割合(%)と値下がりと回答した事業所の割合(%)を差し引きした数値がトラック運賃指数である。

 上図を見る限り、ドライバー不足等を背景に元々明確な値上がり傾向を示していたトラック運賃は、新型コロナウィルスの感染拡大により一旦その傾向が鈍化したものの、21年に入ってからは再び明確な値上がり傾向に転じている。これを見る限り、トラック運賃を中心とする物流コストが値上がり傾向にあることは事実のようである。

 しかしながら、「NX総研短観」は、景気ウォッチャー調査と同様にDI調査であり、傾向を示すことはできても、その傾向の大きさを、例えばトラック運賃が何パーセントくらい値上がりしているのかを示すことはできない。

 日銀「企業向けサービス価格指数」の動向

 トラック運賃を含む物流コストのようなサービス価格の動向を示す指数として日本銀行が毎月発表している「企業向けサービス価格指数」という指数がある。下図は、日本銀行の「企業向けサービス価格指数」の前年同月比の推移を、総平均と道路貨物輸送(トラック輸送)を対象として19年4月から24年2月まで示し、更に消費者物価指数の動向と比較したグラフである。

 ご覧の通り、コロナ禍以前には道路貨物輸送の企業向けサービス価格指数は、総平均も消費者物価指数をも上回る強い値上がり傾向を示していたが、コロナ禍による荷動きの減少のためか鈍化に転じ、以降漸次上昇に向かってはいるものの、総平均も消費者物価指数も大幅に下回っているのが実態である。

 すなわち、現在のトラック運賃は、一般的には前年同月比で1%を若干超える程度しか値上がりしておらず、荷主企業の販売価格を二桁の割合で上げてしまうほどの影響を及ぼすようには見えないのである。


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