図には示されていない他の物流サービス価格の本年2月時点の対前年比を見ると、鉄道貨物輸送と内航海運輸送が共に2.9%、倉庫が1.3%と、これまたいずれも荷主企業の販売価格を二桁の割合で上げてしまうほどの影響を及ぼす値上がりは見られない。
JILS「物流コスト調査」が示す売上高物流コスト比率の動向
そのように申し上げても読者の中には、荷主の販売価格に占める物流コストの割合が大きければ、いくら物流コストの値上がり率が大きくなくとも、影響は大きいのではないかと考える方もいらっしゃるかも知れない。
そのような疑問にお答えするために、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が毎年発表している「売上高物流コスト比率」についてご紹介しておきたいと思う。
JILSでは、毎年、荷主企業を対象に「物流コスト調査」を行い、各社の詳細な物流コストを把握し、売上高物流コスト比率の推移、荷主企業の物流コストの業種別動向、日本全体のマクロ物流コストなどを報告書として公表している。下図は、その中の18年度から23年度の間の売上高物流コスト比率の推移を物流機能別に示したグラフである。
ご覧の通り、直近の6年間については売上高に占める全物流コストの割合は約5%前後、その内数であり「2024年問題」の主役である輸送費の割合は3%前後、保管費の割合は1%未満、その他については1.5%前後といったところである。
売上高に占める割合がこの程度のレベルであるコストが一桁台前半の割合で値上がりしたとしても、荷主の売値を二桁の割合で値上げしなければならないような影響は、一般的には現出しないことはご理解頂けるのではないだろうか。
しかし筆者は、冒頭で取り上げた物流コスト増の影響で二桁の割合の値上げを実施すると表明している荷主企業が嘘をついていると言っているのでは断じてない。繰り返しになり恐縮だが、筆者は物流コストが売上高に占める割合は企業により異なるものであり、場合によってはこのような企業があっても不思議ではないと考えているからである。
筆者が指摘しておきたいのは、このような話題を取り上げる際に、ここまで筆者が述べて来たような客観的データにもとづく一般的トレンドを把握せずに、特定の企業の動向に焦点を当てた報道をアウトプットすると、国民をミスリードすることになるのではないかということである。