2024年7月16日(火)

田部康喜のTV読本

2024年6月5日

災害対応から見せる俳優陣の演技

 ドラマは、毎回異なる災害にSDMのメンバーが直面して、それぞれの得意の技量を発揮して解決する。雪崩に遭難した電力関係会社の従業員の救助、レスキュー隊長が救助した人と滑落した事件、竜巻が迫った人命救助……。

 緊急事態そのものが胸に迫ってくる。筆者がこのドラマに興味を引いているわけは、いずれこのドラマがTVerなどで視聴者数の数を増やすとともに、俳優陣にとっても演技能力の画期となると考えているからだ。キャストの作品の過去と現在ばかりではなく、未来が観えるような感覚に襲われる。

 主演の山下智久は、ジャニーズ事務所から2020年に独立した。この事務所に対するテレビなどの“忖度”が働いていた時代には、冒険とみえた。しかし、コミカルな不動産営業マンを演じた「正直不動産」(NHK、season1・22年、season2・24年)や海外活動など幅を広げた。

 今回の作品はチームリーダーとして組織をけん引する。亡くなった婚約者が忘れられずに死の謎を追う。この先に新たな配役が見えそうである。

 助手役の出口夏希は、Netflixの配信ドラマ「舞妓さんちのまかないさん」(是枝裕和監督、23年)のなかで、青森から京都の館で舞妓さんになろうとする可憐な少女役で注目された。ドラマ「アオハロイド」(WOWWOW、season1・23年、season2・24年)など美少女役でも目立った。山下智久に真っ向から意見する姿で娘役から脱皮する未来が見える。

「娘役」ではない出口(左)の演技もまた違った魅力を見せる

 医療班を率いる夏帆は、日本を代表する女優のひとりであることはいうまでもない。そして、つねに俳優として脱皮を繰り返す稀有の俳優でもある。

 映画「箱入り息子の恋」(市井昌秀監督、13年)では盲目のお嬢様が、さえない公務員役の星野源と切ない恋に落ちる。映画「海街diary」(是枝裕和監督、15年)では、綾瀬はるかと長澤まさみ、広瀬すずの4姉妹の3女として自由でゆったりとした暮らしを求める女性役を好演した。

脳外科医役の夏帆はひと味違う演技を見せている

 今回は優秀な脳外科医だったのが、病院の屋上から飛び降り自殺を図ろうとした少女を救った際に、右腕を痛めて脳外科医の復帰を断念。SDMで新たな人生をみつける。

地震で孤立した集落をどう助けたか

 ドラマを貫いているのは、晴原(山下智久)の婚約者だった園部灯(本田翼)の死である。豪雨のなかで、避難所だった公民館にかけつけて「ここを離れてはいけません!」と叫んだあと、自分はより危険な方向に走りして、その結果亡くなったのである。

 灯の指示によって、公民館に残った計14人のうち9人が豪雨によって亡くなってしまう。なぜ灯は、自らの死を選ぶような行動に出たのか? 登場人物たちの過去を描くことによって、晴原はその真相に迫っていくのである。


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