相次ぐトラブルと、国民に広がる不信感
政府がマイナンバーカードの普及を急いだのは、行政手続きの効率化が求められたからです。コロナ禍では、給付金を迅速に手配できない事態が相次ぎ、接種確認アプリやワクチン接種システムの不具合で混乱を招くなど、行政のデジタル化遅れが浮き彫りとなりました。
このようなことから、あらゆる公的サービスをデジタル処理するための基盤として、マイナンバーの活用とマイナンバーカードの普及が推進されたのです。ちなみに、2023年の世界デジタル競争力ランキングでは、日本は64カ国(地域)中32位で、過去最低の順位となっています。
現在では、1億枚近くのマイナンバーカードが申請(発行)されています。しかし、その一方で「自主返納」を希望する人が増えてきているのも事実です。その主な理由としては、「情報漏洩への不安」や「制度に対する不信感」などが挙げられています。
実際、公金受取口座の紐付けを誤って登録していたり、別人の証明書が誤交付された事案などが確認されており、マイナンバーカードをめぐっては個人情報にかかわるトラブルが相次いでいるのが現状です。
なお、政府は現行の健康保険証を2024年末に廃止すると表明しており、マイナンバーカードと「健康保険証」を一体にした「マイナ保険証」への移行を進めています。しかし、ここでもマイナンバーと健康保険証の紐付けの誤りが発生しています。政府は再発防止策を模索していますが批判の声もあり、国民の理解を得るには時間を要すると言えるでしょう。