社会保障費の財源として最適な「消費税」
1989年に3%の消費税が導入されて以来、その税率は上昇し続けており、2024年現在では10%にまで引き上げられました。ちなみに、消費税を1%上げれば年間で約2兆円の税収が得られると言われています。
消費税はその性質上、人々が消費するモノやサービスに幅広く課税することができます。高齢者も含めて国民全体で負担しているため、現役世代に負担が偏ることもありません。そのため、膨らみ続ける社会保障費の財源としては最適であると考えられています。
なお、日本の消費税にあたる税を、一般に「付加価値税」(VAT:Value Added Tax)と言いますが、欧州ではその税率を20%以上に設定している国もたくさん見られます。なかでも、ノルウェーやフィンランドなどの北欧諸国は税率が高いことで知られており、その分教育費や医療費が無償であるなど手厚い社会保障サービスによって還元されています。
また、消費税に限らず、租税をめぐる諸問題には「公平の原則」という観点が欠かせません。当たり前ですが、特定の業界にだけ厳しい徴税が実施されれば、その業界の人々は不満を募らせるでしょう。しかし、実際に国税庁が正確な所得を把握できる割合は、納税者の業種によって異なります。
たとえば、所得税が給与から天引きされる給与所得者(サラリーマン)であれば約9割の所得は把握できます。しかし、自己申告が基本となる自営業者では約6割、農林水産業関係者では約4割ほどの所得しか把握できません。これは「クロヨン(9・6・4)問題」と言われており、所得の捕捉率の不公平を表す言葉として知られています。
税金逃れを防止する「マイナンバー制度」
このような税金逃れを防止する対策のひとつとして、2015年に「マイナンバー制度」*1が導入されました。
マイナンバーとは、国民一人一人に割り当てられた12桁の個人番号のことで、日本の公的な身分証明書(ID:Identification )となります。マイナンバーは、社会保障や税金、災害時の安否確認など様々な分野における情報の管理・確認に活用されており、これにより行政手続きの効率化や社会保障制度の適正な運用が期待されています。
マイナンバーの導入のきっかけは、2013年に成立した「番号法」(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)でした。2015年半ばより、日本国内に住民票を持っている全住民に個人番号が通知され、本格的な運用がスタートしました。
2016年1月から交付が始まった「マイナンバーカード」は、8年の時を経て、申請件数で約8割の普及率に達しています(2024年2月末)。運転免許証の普及率が7割弱であることを踏まえると、かなりの成果といえるのではないでしょうか。
マイナンバーカードがここまで普及した背景には、総額2兆円の「ポイント事業」があります。政府は制度の開始当初より、マイナンバーカードは国民の申請に基づき交付されるもの*2としており、そのため申請者がなかなか集まらないという状況が続きました。そこで、政府は「大規模なポイント還元を行う」ということでマイナンバーカードの普及に努め、その結果、約8割の人が申請するに至ったというわけです。
*1 元々は総務省の所管でしたが、現在はデジタル庁(2021年設立)に移管されています。
*2 日本政府がマイナンバーの取得を強制しなかったのは、第二次世界大戦の反省から個人情報の管理に対して慎重な姿勢をとっていたからだと考えられます。