2024年12月14日(土)

はじめまして、経済学

2024年6月13日

 加速する「貯蓄から投資」、迎えた「金融政策転換」、景気回復の実態を伴わない「冷たいバブル」…ここ最近、経済に関するニュースが大きな話題を呼んでいます。この身近でありながらも複雑な経済問題について、私たちはどのように向き合えば良いのでしょうか。
 今回の記事では、貨幣の機能や歴史について解説しています。普段から、当たり前のように使っている「貨幣」ですが、なぜ私たちは貨幣に価値があると考えているのでしょうか。その背景には、貨幣の発行元である国の経済力や政治的な情勢といった要素が複雑に絡み合っています。
*本記事は帝京大学経済学部教授の宿輪純一氏の著書『はじめまして、経済学 おカネの物差しを持った哲学』(ウェッジ)の一部を抜粋したものです。
(Nuttawan Jayawan/gettyimages)

取引の成立が困難な「物々交換」

 経済学では、一般的におカネを「貨幣」と呼んでいます。私たちが生きる現代は、貨幣を支払ってモノを買い、サービスを受ける「貨幣経済」です。それ以前、いわゆる古代はモノとモノを直接交換する「物々交換」(Barter Trade)の時代でした。

 物々交換とは言っても、採ってきた獲物や育てた作物などを、その時々で都合よく交換することは非常に困難です。たとえば、漁師が捕獲した魚を農家の野菜と交換したいと思っても、そのタイミングで農家が魚を欲しがっているとは限りません。また、季節によって漁獲量や野菜の収穫量は異なるので、魚と野菜の交換レートも非常に曖昧なものとなります。

 さらに、都合よく交換相手が見つからなければ、せっかく捕獲した魚を腐らせてしまうかもしれません。このように、物々交換はそれぞれの需要と供給がうまくマッチングしなければ取引が成立しない、不安定な経済制度だったのです。


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