人々の信用を前提に流通している「信用貨幣」
ところで、なぜ私たちは貨幣に価値があると考えているのでしょうか? 実際、紙幣の素材は“紙”であり、それ自体に価値はありません。しかし、国がその価値を「保証」し、人々がそれを「信用」することで、そこに貨幣としての価値が生まれます。このように、人々の信用を前提に流通している貨幣のことを「信用貨幣」と呼んでいます。
なお、価値という概念は難しいのですが、突き詰めて考えれば「希少性」ということになります。人類は古代より、希少性の高い「金」(Gold)に共通価値を見出し、金をはじめとする貴金属は実際の貨幣としても使用されてきました。
しかし、大量の金を常に持ち運ぶのは困難で、盗難などの危険も伴います。そこで、人々は「金との引換券」(約束手形)を発行し、それを“金の代用”として取引するようになりました。これが、後の紙幣となっていきます。この紙幣は、「いつでも金と兌換(交換)できる」という意味で「兌換紙幣」と呼ばれ、金と同等の価値を持っていました。
このように、いつでも金と紙幣の交換が保証されている仕組みを「金本位制」といい、19世紀から20世紀初めにかけて世界各国で取り入れられていきました。
しかし、この金本位制の下では、各国は金の保有分だけしか紙幣を発行できないということになります。つまり、“金の保有”という前提がなければ、世の中におカネを供給できず、経済成長が制限されてしまうのです。そのため、1929年の世界恐慌以降、多くの国が金本位制を廃し、金の保有量ではなく、自国の経済力に見合った分の貨幣を発行するという「管理通貨制度」へと移行していきました。
この管理通貨制度では、貨幣を発行する主体である国の信用によって、貨幣価値が決まります。そのため、経済が安定している国の貨幣価値は高くなる一方で、紛争や財政破綻などを引き起こし、情勢が不安定な国の貨幣価値は下がります。
現在では、ほとんどの国がこの管理通貨制度を採用しており、日本では日本銀行(中央銀行)が主体となって市場に出回るおカネの量を管理しています。