2024年12月22日(日)

はじめまして、経済学

2024年6月6日

 加速する「貯蓄から投資」、迎えた「金融政策転換」、景気回復の実態を伴わない「冷たいバブル」…ここ最近、経済に関するニュースが大きな話題を呼んでいます。この身近でありながらも複雑な経済問題について、私たちはどのように向き合えば良いのでしょうか。
 今回の記事では、「株式市場」の仕組みについて解説しています。2024年2月に日経平均株価は大きく値上がりし、バブルの絶頂期につけた史上最高値を更新しました。ところで、そもそも株式の売買とはどのような仕組みなのでしょうか。
*本記事は帝京大学経済学部教授の宿輪純一氏の著書『はじめまして、経済学 おカネの物差しを持った哲学』(ウェッジ)の一部を抜粋したものです。
(tadamichi/gettyimages)

株式は自由に売買できる

 株式は、「株式市場」(SE:Stock Exchange)で自由に売買することができます。一般的に、株式は証券会社を仲介して売買されており、その価格も市場の原理(需要と供給の関係)に従って決められます。その企業の業績が良かったり、新商品や新規事業が注目を浴びていたりすると、需要が高まり株価も向上します。反対に、売上が伸びなかったり、不祥事が発覚したりすれば、需要が下がり株価も落ち込みます。まさに魚の市場で見られるような競りの仕組みと同じようなものです。

 なお、株式や債券などの金融商品を購入することは「投資」(Investment)にあたります。ここでの投資とは資産運用の手段のひとつであり、利益を見込んで自己資本を投じる行為全般を指しています。

 しかし、投資にはリスクが付き物です。見込んだ利益を確実に回収できるとは限りませんし、銀行におカネを預けるのとは異なり、投資した分のおカネを大幅に失ってしまう可能性もあります(元本割れ)。そのため、日本は他の先進国と比べて銀行預金の比率が高く、「株式」などの証券投資は少ないままです。

 現在、岸田政権が「貯蓄から投資へ」のシフトを推進しています。2023年は「資産所得倍増元年」とされ、個々人の生き方・働き方が多様化するなかで、それぞれのライフプランに合わせた資産形成が求められています。政府の側も「NISA」*1を拡充して投資による所得を長期間非課税にするなど、さらなる投資を促しています。

 ちなみに、投資の世界では「ハイリスク・ハイリターン」(High Risk, High Return)という言葉をよく耳にします。これは「損失する危険が大きいが、うまくいけば利益も大きい」という意味で広く理解されています。しかし、本来“risk”は「挑戦」という意味に近く、「頑張って挑戦すれば、大きく報われる」と訳すことができます。しかし、日本では“risk”を「危険」としか訳さないために、投資に対して過度に消極的なイメージを持ってしまっているのかもしれません。

*1 個人投資家のための税制優遇制度。英国の「ISA」(Individual Savings Account)を手本に、日本版ISAとして2014年1月に始まりました。2024年に「新NISA」として制度が拡充されました。(NはNipponの略)

 

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