2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年12月16日

 最近まで、北京の米国への主な不満は、米国が冷戦思考にとらわれているということであった。封じ込めは悪であった。ワシントンがすべきことは中国に対して開放的になることであり、そうすれば関係が改善されるはずであった。米国はそのように行動してきた。しかし、今や、北京、少なくとも「較量無声」の支持者は、交流が中国の存在を侵食すると警告している、と指摘しています。

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 中国にとってソ連の崩壊はトラウマでした。そして、その原因を、従来から「和平演変」と呼んで、西側思想の流入に原因があるとして、警戒的な態度を取っています。映画“Silent Contest”は、その主張の側に立っています。

 しかし、ソ連経済は60年代末には既に機能不全に陥っていたところ、70年代の二度のオイルショックで潤い、その莫大な資金を軍備競争につぎ込んで米国に追い付き追い越すところまで軍事力を強化しましたが、80年代の1バレル10ドルを切る逆オイルショックで破産した時に、折からのレーガンのスター・ウォーズの挑戦を受け、万事休して、ペレストロイカに突破口を求めて自滅した、というのが実態であるように思います。西側の思想の浸透は、長期的には大きなバックグラウンドであったかもしれませんが、ソ連の崩壊に直接の影響は無かったと言ってよいでしょう。とすると、中国の一部が「和平演変」の心理的効果にあまりに重きを置くのは、やや強迫神経症的ではないかと思います。

 ともあれ、現在中国内部で進行していると思われる権力闘争において、毛沢東的とも言える左翼思想が、一部に牢固たる地位を占めつつあることは、このプロジェクトからも覗えます。「中国の夢」や「米中の新しい大国間関係」は、中国が冷戦的対立を辞さないことを示唆しているようにも思われます。そうであれば、腹を括って、封じ込め政策をとる以外に選択肢はありません。オバマにそれを求めるのは無駄かもしれませんが、軍当局同士、実務者同士の協力は進めることができますし、米議会、米世論に訴えることも重要でしょう。

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