かつてのソ連の崩壊は西側との接触と冷戦の終結が原因であったので、中国はその轍を踏まないようにすべきである、という内容の、人民解放軍国防大学が制作に関与している映画が、10月に流出しましたが、この映画について、台北在住のジャーナリスト、コールが11月5日付Diplomat誌ウェブサイトで紹介しています。
すなわち、近年、中国共産党は、西側、とりわけ米国が冷戦思考を持っている、と繰り返し非難してきた。しかし、先月流出した、人民解放軍国防大学が共同制作した新しいビデオによれば、冷戦こそ共産党が必要としているものであり、西側との接触は何としても避けるべき毒薬であるという。
人民解放軍と共産党のどれだけ多くの者がこうした見方に固執しているかははっきりしないが、この映画「較量無声」(Silent Contest;静かなる競争)は、党の過激分子にアピールするものである。彼らは、ここ数カ月、西側の価値と文化の有害な影響を警告し、中国社会への悪影響に対抗するための新しい規制を可決した。人民解放軍総参謀部と中国社会科学院も、映画の制作に関与している。
映画は、西側のシンクタンク、電子音楽、高級ブランドなどあらゆるものを、中国を内部から洗脳して破壊するものとして映し出している。六・四や七・一の記念行事に影響を与え、中国を不安定化させるために、米英領事館が「異常に大きな」資源を香港に侵入させているとして、陰謀論は香港にも及ぶ。映画の中では、米中軍事交流も、両国の信頼醸成の手段ではなく、中国を混乱させるための狡猾な企みとされている。
映画は、中国人に、西側との接触は悪であるという教訓を与えようとしており、ソ連社会の崩壊は、米国が率いるグローバルな謀略によるものだった、としている。さらに、映画は、ソ連の崩壊が冷戦を終わらせたのではなく、むしろ、冷戦の終わりがソ連を崩壊させた、と言っている。映画によれば、ソ連の体制は、西側との接触により徐々に浸食され、ついには崩壊に至ったのであり、同様の運命を避けるには、中国共産党は、中国社会のあらゆる面を強力に把握し続けなければならない。
現時点では、ドキュメンタリーは、共産党内で起こっている主導権争いのための宣伝の一部とみなすべきであろうが、これが本当に中国共産党の達した結論であるならば、台湾にも重大な結果がもたらされ得る。台湾の民主主義と開放的な社会が、西側から輸入されたものであり、米国が率いる中国弱体化計画の一部であると看做されれば、中国共産党は、台湾の自由主義を先制的に破壊することこそ国益に最もかなう、と結論付けるであろう。