2024年12月4日(水)

オトナの教養 週末の一冊

2024年7月20日

反政府運動はなぜ起きた?

女たちのベラルーシ
アリス・ボータ(著)、 岩井智子/岩井方男(訳)、越野剛(解説)
春秋社 2420円(税込)

 「ベラルーシ」と聞いて、どこに位置するのかピンとくる日本人は少ないだろう。本書は、「ヨーロッパ最後の独裁国家」と言われるこの国で、2020年8月のルカシェンコ大統領の不正選挙に対するデモについて描く。きっかけとなったスヴェトラーナ・チハノフスカヤは、大統領選に出馬するまで二児の母であり妻であった。彼女とその仲間がどのような経緯で独裁政権と闘ったか、そしてデモ後に起こった悲劇的な制裁とは何か。今、知るべき事柄が詰まっている本だ。

パイン土着の歴史

パインと移民
廣本由香(著) 新泉社
3850円(税込)

 パインは移民労働とともに存在していた。日本統治下の台湾で生産されて、日本本土にぜいたく品として移出されていたパインは、第二次世界大戦後、その産業自体が台湾から沖縄にやってきた。かつて石垣島の辺境地と言われた場所からパイン生産の中心となるまで、どのような変遷があったのか。本土からの保護や生産量の重視などによる質の低下からどのような復興を遂げていったのか。栽培条件などの知識から歩んできた当時の時代背景まで、パインの歴史を読み解く。

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Wedge 2024年8月号より
JAPANESE, BE AMBITIOUS! 米国から親愛なる日本へ
JAPANESE, BE AMBITIOUS! 米国から親愛なる日本へ

コロナ禍が明けて以降、米国社会で活躍し、一時帰国した日本人にお会いする機会が増える中、決まって言われることがあった。 それは「アメリカのことは日本の報道だけでは分かりません」、「アメリカで起こっていることを皆さんの目で直接見てください」ということだ。 小誌取材班は今回、5年ぶりに米国横断取材を行い、20人以上の日本人、米国の大学で教鞭を執る研究者らに取材する機会を得た。 大学の研究者の見解に共通していたのは「日本社会、企業、日本人にはそれぞれ強みがあり、それを簡単に捨て去るべきではない」、「米国流がすべてではない」ということであった。 確かに、米国は魅力的な国であり、世界の人々を引き付ける力がある。かつて司馬遼太郎は『アメリカ素描』(新潮文庫)の中で、「諸民族の多様な感覚群がアメリカ国内において幾層もの濾過装置を経て(中略)そこで認められた価値が、そのまま多民族の地球上に普及する」と述べた。多民族国家の中で磨かれたものは、多くの市民権を得て、世界中に広まるということだ――


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