2024年7月18日(木)

BBC News

2024年7月18日

米大統領選挙に向けた共和党の全国大会は17日、ウィスコンシン州ミルウォーキーで3日目が開かれ、ドナルド・トランプ前大統領が副大統領候補に指名したJ・D・ヴァンス上院議員(39)が、指名を受諾する演説をした。ヴァンス氏は、テレビのゴールデンタイムに中継された演説で、民主党に「脇に追いやられ、忘れ去られた」労働者階級の国民のために闘うと誓った。

ヴァンス上院議員(オハイオ州選出)は、中西部の貧しい環境で育った自らのルーツを語り、ジョー・バイデン大統領のような「キャリア政治家」を批判した。

また、トランプ前大統領は国民にとって「最後で最善の希望」だと訴えた。

トランプ前大統領とヴァンス氏のペアは11月の大統領選で、民主党のバイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領の現職ペアと対決する見通しとなっている。

ヴァンス氏が副大統領になれば、米史上最も若い副大統領の一人となる。

共和党大会は18日夜、トランプ前大統領による大統領候補の指名受諾演説でクライマックスを迎える。

ヴァンス氏の演説

ヴァンス氏はこの夜の演説で、オハイオ州の小さな町での困難な幼少期から、海兵隊、イェール大学ロースクール、そして連邦上院議員になるまでの道のりを紹介した。

アパラチアの炭鉱地帯の貧しい家庭で育ったことについては、ベストセラーとなった回顧録「ヒルビリー・エレジー」でも語っている。ヴァンス氏はこの夜、「アメリカの支配階級」が貿易協定や外国での戦争によって、自らの故郷のようなコミュニティーを破壊してきたと訴えた。

そして、「イラクからアフガニスタンまで、金融危機から大不況まで、開け放った国境から賃金の停滞まで、この国を治める人々は失敗に失敗を重ねた」と主張。

「ドナルド・トランプは、失ってしまえば二度と見つからないであろうものを取り戻すための、アメリカにとっての最後で最善の希望の象徴だ」と続けた。

また、アメリカを「権力の中枢から遠く離れた場所で生まれた労働者階級の少年が、こうした舞台に立つことができる国」と表現した。

アメリカは伝統的に新参者を歓迎してきたが、外国人労働者の輸入はすべきではないとし、「新参者を受け入れるときは、私たちの条件に従って受け入れる」と訴えた。ヴァンス氏の妻で弁護士のウシャ・ヴァンス氏は、インド系移民の娘。

この夜の演説では、ヴァンス氏はウクライナ戦争には触れず、党大会3日目のテーマだった外交政策についても多くを語らなかった。

ヴァンス氏は、世界平和を確実にするするために、アメリカの同盟国も負担を分かち合う必要があると主張。アメリカは紛争を避けるが、挑発されればトランプ政権2期目は「激しいパンチを放つ」とした。

演説の冒頭では、13日に起きたトランプ前大統領の暗殺未遂事件について語った。

「彼(トランプ前大統領)は暴君だと非難された」、「何としても阻止されなければならないと言われていた。しかし、彼はどう応じたのか? 国民の団結と平静を呼びかけたのだ」。

ヴァンス氏は事件発生直後、トランプ前大統領を民主主義の脅威だとしてきたバイデン氏の発言や警告が、事件を引き起こしたと非難した。

ヴァンス氏はかつて、「反トランプ」の立場を取り、前大統領のことを「アメリカのヒトラー」になりかねない「ばか者」だと切り捨てていた。

そのころシリコンヴァレーのベンチャーキャピタリストだったヴァンス氏は、その後にトランプ前大統領との関係を修復。2022年には前大統領の支持を得て、上院議員に当選した。

民主党は過去の発言を批判

ヴァンス氏について民主党は、過去の発言を取り上げて攻撃している。

バイデン氏は17日夜にX(旧ツイッター)で、ヴァンス氏の人工妊娠中絶とウクライナに関する立場を批判した。

ヴァンス氏はかつて、「ウクライナがどうなろうと知ったことではない」と発言した。また、中絶の全国的な禁止を支持した。

中絶については、ヴァンス氏は最近、姿勢を軟化させ、各州が決定すべきだとする共和党の公式方針に沿った発言をしている。

ほとんどの国民には知られず

大半の米国民はこの夜まで、ヴァンス氏のことをほとんど知らなかった。

先月実施された米CNNの世論調査では、ヴァンス氏について登録有権者の13%が好意をもっていると答え、20%が好意をもっていないとした。回答者の3分の2近くは、ヴァンス氏のことを聞いたことがないか、同氏について何の意見も持っていないとした。

この日の大会参加者にも、ヴァンス氏の経歴について学んでいるところだと話す人がいた。

ルイジアナ州代議員のシンディ・ドーア氏とジャッキー・キャノン氏は、トランプ前大統領が選んだ副大統領候補に興奮していると話した。

ドーア氏は、「彼は若くて、生き生きとしている」とヴァンス氏の印象を語った。一方で、「ヒルビリー・エレジー」は高く評価してものの、それ以外は同氏についてよく知らないとした。

米デイトン大学のクリス・デヴァイン准教授(政治学)は、副大統領候補の人選が大統領選全体に与える影響について、通常はかなり小さいとBBCに話した。

「人々がもしJ・D・ヴァンスを経験不足だとみなせば、ドナルド・トランプと彼の判断への評価を下げるだろう」、「大したものではないが、わずかに影響する可能性はある」。

同准教授はまた、ヴァンス氏について、政治家としては比較的新人ながら「驚くほど有能なコミュニケーター」だと述べた。

(英語記事 Trump VP pick Vance vows to fight for 'forgotten' Americans

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cx92pn4gyjwo


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