ただし、この時の「主導権」はまだ人間の側にありました。分かりやすく言うと、スマホに入力した情報から導き出されるレスポンスなどはある程度、人間が想像できるものであり、われわれ人間が主導権を持って、スマホというコンピューターを扱っていた状態であると言えます。アップルのバーチャルアシスタント「Siri」での会話を想像してもらえれば分かりやすいかもしれません。ご承知のように、Siriの会話はまだまだぎこちないレベルです。
しかし、GPT−4oはレベル感が全く違います。まるで人間と話しているかのような感覚になるからです。このままAIが進化していけば、「人間」と話しているのか、「コンピューター」と話しているのか、あるいは、「人間」が創出したものか、「コンピューター」が創出したものか、その境界は分からなくなるでしょう。
人間に比べて、AIにはまだできないことがたくさんありますが、ある特定の領域においては、すでに人間を凌駕しているのです。
『ターミネーター』が
現実のものになる?
AIには人間と違って身体がありませんが、その点についても大きく進化しています。例えば、ヒューマノイドロボット「Apollo」です。身長約176センチメートル、体重73キログラムで、4時間稼働し、荷物運びなどを完璧にこなすこともできます。今は人の指示によって動いていますが、ここにAIが実装されると、どんなことが起きるでしょうか?
マシンガンを持たせて戦場に投入すれば、兵士の代わりにもなるはずです。つまり、人を殺めるという意思決定権を持たせるのか、持たせないのか、人類はその分水嶺に立たされていると言えます。AIによって人類が滅亡するリスクに言及したり、核戦争などと同列視する人がいたりするのはそのためでしょう。
チャットGPTに「地球温暖化を解決する方法を教えて」と尋ねたら、「人類を滅ぼすこと」という答えを出したとすると、どうなるでしょうか?
AIが自律した意思決定をできるようになれば、現実としてそうしたことが起きてしまう可能性もあります。そうなれば、「スカイネット」という人類を滅ぼそうとするAIが登場する映画『ターミネーター』の世界と何ら変わらないことになります。
2045年と予測されている「シンギュラリティー(AIの能力が人類を凌駕する)」が到来したとき、ロボットが人間のような「心」を持っているかどうかは不明ですが、まさに予測不可能な状況にあることに違いありません。
AIによって
人類は進化できる
恐ろしい話ばかりしてしまいましたが、その一方でAIは人類をより進化させる可能性も持っています。それを感じさせるのが「Boomy AI」です。これは、AIが瞬時にして作曲するサービスです。楽器を弾くことができなくても、誰でも使用できます。これによって、アーティストになるためのハードルは下がるでしょう。
振り返れば、これまでも米津玄師などは、音声合成ソフト(「ボーカロイド」)で楽曲を制作していますから、それと似ているのかもしれません。クリエイティブはある意味、「模倣」から始まります。今後はAIに学習させることで、さまざまなヒット曲が生まれる可能性が格段に高まっていくのではないでしょうか。