2024年11月22日(金)

JAPANESE, BE AMBITIOUS!米国から親愛なる日本へ

2024年7月31日

成長だけが
良いことなのか

 ところで、日本では国内総生産(GDP)がドイツに抜かれて世界4位になったことが大きく報道された。しかし、ここで考えるべきなのは、「成長だけが良いことなのか」という点だ。一人当たりGDPを見ると、日本はその変化があまり大きくない。

 一方で米国を見ると、1950年代から80年代、さらに現在に至る数字を見ると、生産性は上がっていても国民の平均収入はそれほど上がっていない。国内での格差は広がる一方だ。

 格差があると消費が抑えられるため、成長の足かせとなる。日本の場合、第二次世界大戦後に「成長」と「平等」が同時に存在したが、90年代以降は双方が下がる結果となっている。それでも日本には優れた教育制度があり、機会平等が存在する社会になっている。

 ただし、基礎教育では強みのある日本だが、高等教育では差が出てしまう。米国の大学には学ぶべき点が多くあるだろう。特に技術教育を考えると、日本ではソフトウェア教育が不足している。

 もう一つの問題は超高齢社会による労働力不足で、「移民を受け入れるべきか、否か」という議論が浮上する。

 経済的に移民はプラスに働く。若い労働者層が増えるためだ。米国は移民の受け入れに積極的な社会であり、初期は成功していたと言える。しかし、最も古い移民である黒人と白人の対立は今も続くなど、差別につながる政策も多く見られる。

 労働力不足を補うために移民受け入れは良い政策ではあるが、その入れ方については慎重になるべきだろう。社会の「多様性」は、さまざまな利点をもたらす一方で、差別や格差など、社会に軋轢を生む可能性もあるためだ。

 ところで、移民受け入れに成功した例としてシリコンバレーが挙げられる。独自のエコシステムを構築し、IT革命に成功した。これはマーケットクラフトの好例と言える。しかしGAFAMが強大になりすぎて独占禁止法で規制する動きも見られる。規制を批判する声もあるが、実際にGAFAMはM&Aにより、「反競争的行動」をとっている面がある。ライバル会社を吸収することにより、市場は安定するが、競争は低下するためだ。

 独禁法といえばよく例に挙げられるのが80年代にあった「日米半導体戦争」だが、そもそも日本は日立などの電子機器メーカーが半導体も作っていた。しかし米国では、自社使用ではなく、他社に販売する場合、独禁法により、両方を作ることは禁じられていた。これを不平等だ、と訴えたのが半導体戦争の始まりだったのだが、結果的には米国の独禁法が成功したと言える。

 なぜなら特定の製品に特化することにより、「モジュール化」という技術のパラダイムシフトが生まれたからだ。ソフトウェアと半導体を別の企業が作ることにより、効率化が進んだのだ。これを象徴する「Wintelism」(ウィンドウズとインテル双方の成功を表す言葉)が生まれたほどだ。

 このようにシリコンバレーを中心とするイノベーションはインターネット産業を基軸にして発展してきたのだが、日本の経済産業省はシリコンバレーを真似て、失敗を繰り返してきた。日本独自のイノベーションを刺激する政策が、打ち出されてこなかったためだ。


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