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バーバラ・プレット・アッシャー(エルサレム)、トマス・マッキントッシュ(ロンドン)、ラシュディ・アブアルーフ(イスタンブール)
ガザ市の病院院長は10日、多くの住民が避難していた学校をイスラエル軍が空爆し、70人以上が死亡したとBBCに明らかにした。
死傷者の多くが搬送されたアル・アフリ病院のファドル・ナイーム院長はBBCに、身元が確認できたのが約70人で、それ以外の大勢は遺体の損傷があまりに激しく、身元確認が困難だと話した。
イスラエル国防軍(IDF)報道官は、標的にしたアル・タバイーン学校について、イスラム組織ハマスとイスラム原理主義組織イスラム聖戦が「現役の軍事施設として活用していた」のだと説明した。ハマスはこれを否定している。
IDFは「アル・タバイーン校を拠点としていたハマス司令部で活動していたハマスのテロリストたちを正確に攻撃した」と表明。IDFとイスラエル総保安庁は、「ハマスとイスラム聖戦のテロリストが少なくとも19人」、この攻撃で「排除された」と述べた。
AP通信によると、この攻撃で殺害されたのは60人以上だとハマス運営の保健省は明らかにしている。ハマスが運営するガザ民間防衛当局によると、90人以上が殺害されたという。
イスラエルとハマス双方が発表する死傷者数について、BBCは独自に確認できていない。
イスラエル軍の報道官は、「IDFが得ている情報のほか、使用した砲弾や空爆の正確性に照らして」ハマス側が発表する死傷者数は「合致しない」と述べている。
ハマスは今回の学校攻撃について、「パレスチナの人々の絶滅を目指す戦争」においてイスラエルが「恐ろしい犯罪を犯し、危険なエスカレーション」を実行したと非難した。
イスラエル占領下のヨルダン川西岸でハマスと政治的に対立するファタハは、イスラエルの目的は「パレスチナ人の殺害を積み重ねることでパレスチナ人を絶滅させること」だと非難した。
周辺諸国は今回の攻撃について、イスラエルがガザ停戦を目指していないしるしだと非難。国連や西側諸国も民間人の犠牲を非難し、アメリカ政府も「深い懸念」を表明している。
イスラエルはこのところ、ガザ住民の避難先を繰り返し攻撃している。国連によると7月6日までに、ガザ地区内の学校564カ所のうち477カ所が直接攻撃されるか間接的に破壊され、それ以降も少なくとも13カ所が標的にされている。
祈りの時間に空爆
今回空爆されたアル・タバイーン学校には、1000人以上が滞在していた。イスラエル軍に立ち退きを命令されたベイト・ハヌーンの住民数十人が、最近新たにこの学校に身を寄せたばかりだった。
校舎はモスク(イスラム教の礼拝所)としても利用されており、目撃者によると早朝の祈りの時間にイスラエル軍は空爆を実施したという。
学校の近くに住む学生のジャアファル・タハさんはBBCに、空爆の音に続いて大勢が「助けて、助けて」と叫ぶのが聞こえたと話した。
「恐ろしい光景だった。あちこちに体の一部が飛び散って、壁は血まみれだった」とタハさんは話した。
国連児童基金(ユニセフ)のサリム・オウェイス報道官はBBCに、「まったく言語道断」の攻撃だと話した。
「どの校舎も、民間人でいっぱいだ。子供や母親や家族だ。学校だろうがモスクだろうが、病院の庭だろうが、避難できるならどんな場所にでも避難している人たちだ」
イスラエルは病院や学校を攻撃する理由として、ハマスがこうした民間施設を攻撃策定および実施の拠点にしているからだと主張。病院や学校への攻撃は国際法で禁止されている。
イスラエルのこうした主張を、ハマスは再三、否定している。
アメリカも懸念表明
ガザ停戦交渉を仲介しているエジプト政府は、非武装のパレスチナ人をイスラエルが「わざと殺害」したと非難し、戦争終結への政治的な意思がイスラエルに欠けていることのあらわれだとした。
同様に停戦交渉を仲介しているカタール政府は、攻撃の真相について直ちに第三者調査を実施するよう求めた。
大勢の民間人が死傷したと伝えられていることについて、アメリカ政府も「深い懸念」を表明した。
国家安全保障会議のショーン・サヴェット報道官は、「ハマスが学校を活動拠点にしていることは承知している」としつつ、「民間人の被害を最小限に食い止めるため、対策を講じなくてはならないと、私たちはイスラエルに繰り返し、そして一貫して呼びかけている」とも述べた。
サヴェット報道官は、「依然としてあまりに多くの民間人が殺害され、負傷している」として、「停戦と人質解放の取引が急務だと裏付ける事態だ」と話した。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、「こうした恐ろしい事態が目の前で続くのを、もう終わらせなくてはならない」と述べた。
フランス外務省は、イスラエルの攻撃を「厳重に」非難し、「もう数週間にわたり学校の校舎が繰り返し標的にされ、耐えがたいほどの数の民間人が犠牲になっている」と指摘。
「イスラエルは国際人道法を尊重しなくてはならない」と、フランス外務省は強調した。
イギリスのデイヴィッド・ラミー外相は、「悲劇的な人命喪失」に「愕然(がくぜん)としている」と述べ、「即時停戦」が必要だと強調した。
ハマスは昨年10月7日、イスラエル南部へ奇襲攻撃を仕掛け、約1200人を殺害し251人を人質にした。
これを機にイスラエルはガザ地区への全面攻撃を開始。ハマス運営の保健省によると、ガザでは3万9790人以上が殺害されている。
(英語記事 Israeli strike in Gaza kills more than 70, hospital head says)