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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーは10日、国境を接するロシア西部クルスク州で自軍が越境攻撃を行っていることを初めて認めた。クルスク州をめぐってはロシアが6日に攻撃を受けたと発表し、後に同州に非常事態が宣言されていた。
ゼレンスキー大統領は10日夜のテレビ演説で、ウクライナ軍が「侵略者の領内へと」戦争を押し込んでいると述べた。
ウクライナ軍の越境攻撃はロシアに不意打ちを食らわせ、両国の国境沿いで大規模な避難を引き起こした。
ウクライナ国内では11日早朝に、首都キーウと北部スーミ州で複数の爆発が報告された。
キーウ市のヴィタリ・クリチコ市長は、防空部隊が「稼働中」で空襲警報が続いていると述べた。市長は、民間人にシェルター内にとどまるよう警告するメッセージを、メッセージアプリ「テレグラム」に投稿した。
ウクライナ空軍は、キーウとその周辺地域、そして東部全域で空襲警戒体制が敷かれていると発表した。
侵略者への「必要な圧力」、国境地帯から多数避難
ゼレンスキー氏は10日の演説で、ウクライナの「戦士たち」に感謝するとともに、ロシア国内での作戦についてウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官と協議したことを明らかにした。
そして、「ウクライナは正義を取り戻せると、そして侵略者に必要な圧力を確かにかけられると、証明している」と付け加えた。
複数報道によると、ウクライナ軍は国境から10キロ以上離れた地点に到達し、町の一つを占拠しようとしている。2022年にロシアの全面侵攻が始まって以来、ウクライナがこれほどロシア領内で前進するのはこれが初めて。
クルスク州では11日早朝、13人が負傷(うち2人は重傷)したと、同州のアレクセイ・スミルノフ知事代行は述べた。
ロシア国営タス通信によると、国境地帯からはすでに7万6000人以上が避難した。スミルノフ氏は11日、民間人を安全な場所へ避難させる作業を加速させるよう、関係当局に命じたと述べた。
ウクライナの突然の越境攻撃に対応するため、ロシア国家反テロ委員会は9日、3つの地域に「対テロ作戦」体制を敷いた。
これは、当局がクルスク州、ベルゴロド州、ブリャンスク州の国境地帯で人や車両の移動を制限し、電話の盗聴などの措置を取れることを意味する。
ウクライナ軍、主要ガス施設を制圧か
ロシアによると、最大1000人のウクライナ兵は6日朝、戦車や装甲車の援護を受けながらクルスク州に侵入した。
これ以降、ウクライナ軍は多数の村を占拠し、クルスク州の町スジャにも迫っているとされる。
9日には、スジャと、ロシアのエネルギー大手ガスプロムが所有する主要ガス施設を制圧したと主張するウクライナの武装兵とされる動画が浮上した。
BBCヴェリファイ(検証チーム)はこの動画が確かに、ウクライナ国境から約7キロ離れたスジャの北西郊外にあるガスプロム社施設で撮影されたものだと確認した。この映像だけでは、ウクライナ軍が町全体を占拠したとする主張が事実かどうかは、検証できない。
ロシアの軍事ブロガーたちはこれより先に、スジャはロシア側が掌握していると主張していた。
BBCヴェリファイは9日朝にオンライン投稿された別の動画についても、撮影場所を確認した。この動画には、ロシア国境から約38キロ離れた町オクチャブルスコエを通る道路上に、損傷したり燃やされたりしたロシア軍車両15台が乗り捨てられている様子が映っている。
また、複数のロシア兵も映っている。これには負傷している兵士や、死亡した可能性のある兵士も含まれる。
ロシアはクルスク州に戦車やロケット発射システムなどを含む増援を送っている。
ロシア国防省は10日朝、ロシア部隊はウクライナ部隊による「侵攻の試みを撃退し続けている」との最新報告を発表。ウクライナが「ロシア領の奥深くまで突破」しようとする動きは、阻止したと主張した。
ロシア側の主張について、第三者による客観的な検証はされていない。
戦闘がロシア最大級のクルスク原子力発電所にじりじりと迫りつつある中、国連の国際原子力機関(IAEA)は9日、ロシアとウクライナの双方に「最大限の自制」を求めた。
IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は、「深刻な放射性被害をもたらす可能性のある原子力事故を回避する」ための措置を講じなければならないと述べた。
同原子力発電所はスジャの北東約60キロに位置する。