2024年8月10日(土)

BBC News

2024年8月10日

ケイティー・ラザール文化・メディア編集長

BBCで最も高報酬のニュースキャスターとして、ヒュー・エドワーズ被告は年間50万ポンド(約9300万円)近い給与を得ていた。

それだけに、昨年11月に逮捕されてから今年4月に辞職するまでの給与を回収すれば、BBCはこれまでの対応について、ある程度は信頼を回復できるかもしれない。エドワーズ被告は長年、BBCの大スターの一人だっただけに。今ではすっかり名誉を失墜してしまった人だが。

しかし、エドワーズ被告に書簡で返金を求めたBBCは、正しいことをするよう、同被告に頼っているようにも見える。

同被告の過去の振る舞いについて今わかっていることに照らせば、BBCの今の対応はどれほど現実的なのだろうか?

エドワーズ被告は7月、未成年のわいせつ画像を作成した罪で起訴された。エドワーズ被告はこの罪状で昨年11月に逮捕されたが、その時点ですでに別の疑惑で停職となっていた。しかし、今年4月に「医師の助言」を受けて退職するまで、給与の全額を受け取っていたことが明らかになっている。

「この件の悪者」

BBCの理事会は、エドワーズ被告は「BBCへの信頼を明らかに損ない、評判を落とした」と指摘。同被告を「この件の悪者」と呼んでいる。

この力強い表現は、同被告がどれほどBBCの評判を傷つけたかということへの、理事会の認識の表れでもある。

声明でBBCは、ごく最近まで最も信頼されていた司会者の一人だった人物を、ためらわずにはっきりと非難している。

1年前には想像もできなかったことだ。しかし、あまりに多くのことが変わり、エドワーズ被告がBBCと、そのすべてを象徴するものを裏切ったのだという深い思いがBBCにはある。

一方で理事会は、エドワーズ被告の逮捕後も給与を支払い続けると、ティム・デイヴィー会長と他の幹部が昨年下した決定を断固として支持している。

昨年11月の逮捕をBBCが知らされてから、本人に自ら辞職する余地が与えられるまでの5カ月間、視聴者の受信料などから約20万ポンド(約3700万円)が、被告に給与として支払われたはずだ。

BBCには、そうする契約上の義務があり、「善良な管理者としての注意義務」、いわゆる善管注意義務もあったと、そう理解する人もいるだろう。しかし、多くの人はそう思わないはずだ。

また、3月に就任したサミール・シャー理事長が、組織内で権力を持つ人間の悪行にBBCがどう対処するかについて、この現在進行中の問題に「心を痛めている」と語っていたことも示唆的だ。

理事会はこのほど、職場慣習について提言する独立調査を開始している。この取り組みは歓迎されるだろう。

しかし、BBC内ではすでに2件の内部調査が行われている。

1件は、英紙サンが報じたエドワーズ被告に対する最初の疑惑で、同被告が10代の未成年に性的に露骨な写真を撮らせたというものだった。

その後、同被告の同僚に対する振る舞いについても、極秘の懲戒手続きが行われた。

どちらの調査も、いっさい公表されなかった。

これまでの調査内容が、仮に新しい調査に反映されるのだとしても、どの程度そうなるのかは不明だ。また、公表される結果も、過去に提起された具体的な懸念に言及するより、将来を見据えたものになるだろう。

社内で何か心配なことがあるスタッフの声に、BBCがどこまで徹底的に耳を傾けるのか。そして、社内の苦情にどこまで全面的に対応するのか。これこそが、今後のBBCにとって真の試練となる。

(英語記事 Is the BBC realistic to ask Huw Edwards to return his pay?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/ckg10vx4dydo


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