2024年8月10日(土)

BBC News

2024年8月10日

ショーン・コクラン王室担当編集委員

イギリス国王チャールズ3世は、国内で発生した一連の騒乱について言及し、暴動の「攻撃性と犯罪性」に対抗した「コミュニティー精神」と「思いやり」を称賛した。

バッキンガム宮殿によると、チャールズ国王は9日の夕方、キア・スターマー首相や警察長官と電話で会談。その際、「暴力的な混乱に見舞われた地域の平和を取り戻すため、警察や救急隊が尽力していることに心から感謝する」と述べた。

国王は団結を呼びかける中で、「相互尊重と理解という共通の価値観が、引き続き国民を強化し団結させる」ことを願っていると話した。

スコットランドに滞在中の国王は、首相との電話会談で、一連の騒乱と暴動について話した。

別の電話会談で国王は、全国警察本部長会議のギャヴィン・スティーヴンス議長と、治安対策幹部のベン・ハリントン・エセックス警察本部長と会談。警察の努力に感謝するとともに、抗議活動の最新情報を得た。

王室の報道官は、「国王は、少数の人の攻撃性や犯罪性を前に、コミュニティー精神を持つ大多数が思いやりと忍耐をもって対抗したこと、そうした例が数多く見られたことに、大いに勇気づけられたと語った」と述べた。

イギリスでは、7月末のサウスポートでの殺傷事件で3人の女の子が殺害された後、犯人は亡命希望者だという誤った情報がインターネット上で広がった。

この事件をきっかけに各地で起きた騒乱で、モスクや亡命希望者が宿泊するホテルなどが襲撃されたほか、店舗への放火や略奪があった。これまでに400人以上が逮捕され、140人以上が起訴された。すでに有罪判決が出ているケースもある。

国王は介入するべきか

チャールズ国王が暴動について発言するかどうか、国内ではさまざまな意見があった。イギリス国王は政治的に中立な君主であるため、国王は初期対応を閣僚に委ねていた。

しかし、国王はイギリスを「さまざまな共同体から成る共同体」と呼び、異なる信仰や文化の架け橋となるよう取り組んできた長い実績がある。

今回の騒動であらわになった国内の分断に対して、国王は寛容と「相互尊重と理解」を呼びかけることで、自分自身の見解を公表した。

国王は現在、夏休みでスコットランドに滞在しているが、暴動の影響を受けたコミュニティーをまとめるため、水面下での取り組みに携わっていたと言われている。

だが騒乱が収まるまで、国王が直ちに各地を訪問することはないとみられている。

これは、2011年の暴動発生後の王室対応を踏襲したもの。エリザベス女王は当時、騒乱の最中にはメッセージを発表せず、王族による訪問は平穏が戻った後に行われた。

チャールズ国王(当時は皇太子)はその際、トッテナムやなどの被害地域を訪問し、暴動後の地域間の関係を奨励した。

一方、国王が介入しないことへの批判も出ている。

反君主制団体「リパブリック」のリーダー、グレアム・スミス氏は、「君主は国民をまとめる存在であるはずなのに、国家が危機に瀕したとき、国王の姿はどこにもない」と語った。

これに対し、歴史家で作家のサー・アンソニー・セルドンは、国王は暴動に関する議論にすぐさまかかわるべきではないと述べた。

「国王は国家元首だ。危機が進行している間は、政府トップの首相が危機管理を行い、言うべきことを言うのが適切だ」

「国王が話をするのは、もしするとしても、すべてが再び落ち着いてからだ」と、サー・アンソニーはBBCに話した。

暴動に見舞われた地域を即座に王室が訪問することについては、警察にさらに負荷がかかるという、現実的な懸念もあるという。

(英語記事 King hails community spirit against riot 'aggression'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c78ldgrklvzo


新着記事

»もっと見る