2024年8月10日(土)

BBC News

2024年8月10日

ソニア・オクスリー、BBCスポーツ(パリ)

パリ・オリンピック(五輪)で9日、ブレイキンが待望の五輪デビューを果たした。ヘッドスピンやDJ、まったく新しい言葉が、パリの舞台で注目された。

トップロック、フリーズ、ダウンロック、ドロップなど、アクロバティックな動きやスピン、複雑なフットワークを合わせた演技で、今大会初採用の競技が大きな野外アリーナのファンを沸かせた。女子種目のBガールの初代チャンピオンには、日本のダンサーネームAMI(湯浅亜実)がなった

リトアニアのNICKA(ドミニカ・バネヴィチ)が銀メダル、中国の同671(劉清漪)が銅メダルを獲得した。

ブレイキンは、1970年代に米ニューヨークで生まれたストリートダンスの一種。五輪に若い観客を新たに呼び込もうと導入された。

パリのコンコルド広場は、この大会のために都市型スポーツエリアに様変わりした。エッフェル塔とグラン・パレを望むこの場所で、迫力あるビートに乗って、ブレイキンは最大のステージに登場した。

Bガールでは16人の選手が、総当たりの予選と、負ければ終わりの決勝トーナメントで、1対1のバトルを繰り広げた。初めて観戦する観客向けに、快活な進行役(MC)2人が合間に説明を加えた。

ショーであり、スポーツであり、ダンスでもあった。それらすべてが楽しかった。

審判が自分の席に向かう前に、まず自ら演技を披露する競技は、数ある五輪競技の中でもあまりない。

しかも審判らは、決められたシステムに沿って点数をつけるのではない。ただ単に手元の画面のデジタルスライダーをスライドさせて、勝者を選ぶのだ。

この競技には、決まった動きすらない。Bガールと呼ばれる女性ダンサーらは、DJがどんな音楽を選ぶのかわからない。そのため、60秒間の演技(スローダウン)は即興で行う。

その動きは目を見張るものだった。くるくる回り、頭や片手でバランスを取り、体を揺らし、よじれた姿勢のままぴたりと止まった。観客からは何度も「おー」という歓声が上がった。

ジェスチャーも大きな要素だった。相手の演技中、指を振ったり、ポーズを取ったりした。互いに拍手を送り、抱き合った。

ファンも選手も明らかに、この瞬間を楽しんでいた。再び五輪の競技になる保証がないだけに、なおさらだった。

4年後のロサンゼルス五輪では、ブレイキンはプログラムに組み込まれていない。しかし、どんな大会にするか検討している2032年ブリスベン五輪の組織委員会は、このエネルギッシュなデビューを興味深く見ていたことだろう。

2022年世界選手権の覇者で、この日は銅メダル争いで671に敗れたINDIA(インディアデウィ・サルトジョー)は、「ここにいられてとてもうれしい」と話した。

「これはとても意味がある。ブレイキンがこんな大舞台で披露されるのは初めてだし、しかも世界最大の舞台の上にいる」

この日の競技は、ラッパーのスヌープ・ドッグさんがオープニングを飾った。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長も観客席で、自らが招致した最新競技を見守った。

新たに若い観客を引きつけようというIOCの取り組みでは、ブレイキンのほか、スケートボード、スポーツクライミング、自転車競技BMXフリースタイルなど、都市型スポーツも正式種目に採用された。

1970年代にニューヨーク・ブロンクスのヒップホップ・カルチャーから生まれたブレイキンは10日、男子種目のBボーイが金メダルをかけたバトルを繰り広げる。

ブレイキンのデビューに対する反応

大会組織委はこの1週間、コンコルド広場の都市型スポーツ公園で、ブレイキンの盛り上げに努めた。

スケートボード競技が開かれる前から展示を始め、BガールとBボーイが一般の観客の前で練習を行った。見たこともない競技から人々がどんなことを期待できるのか、感じ取ることができる趣向が凝らされていた。

そして実際に、人気を得た。

子どもたちは、目にした動きを通りでまねた。公園のあちこちで開かれた一般向けの「やってみよう」セッションには、人々が果敢に参加した。ブレイキンはしっかりと受け入れられた。

新しいファンも増えたが、長年ブレイキンに関わってきた人々からも称賛の声が上がっている。

フィジカル・ジャークス・クルーの元ダンサー、キッド・キアは「こんなふうに人々に注目され、懸命に努力してきた人たちが祝福されるのは素晴らしい」とBBCスポーツに話した。

「ブレイキンやBボーイ競技は芸術であり、実際にはスポーツではないのだからオリンピックに含まれるべきではない、と感じる人もいる。この芸術の中心にあるのは個性、創造性、音楽性であり、『正しいやり方』はない。そのため、判定は非常に主観的になる」

「私個人としては、自分が情熱を感じることに打ち込み、懸命に努力する人に最大の敬意をもっている」

日本からはAYUMI(福島あゆみ)も出場したが、準々決勝でINDIAに敗れた。

(英語関連記事 Breaking makes head-spinning Olympic debut

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c935q253lp0o


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