2024年8月11日(日)

BBC News

2024年8月11日

パリ・オリンピック(五輪)のボクシング女子で、性別をめぐる適性資格が議論となるなか、台湾の林郁婷(28)が10日、57キロ級で金メダルを獲得した。前日に66キロ級で優勝したアルジェリアのイマネ・ケリフ(25)に続き、議論の渦中に置かれているボクサーとしては2人目の金メダリストとなった。

林とケリフは昨年の世界選手権で、国際ボクシング協会(IBA)による性別をめぐる資格検査で不合格だったとされ、失格となった。一方、パリ五輪では、国際オリンピック委員会(IOC)によって出場が認められた。

林は今大会、2日から予選、準々決勝、準決勝と勝ち進み、この日の決勝ではポーランドのユリア・シュレメタ(20)と対戦。圧倒的な強さを見せ、審判員全員一致の5-0で判定勝ちした。

準決勝までは対戦相手が抗議する様子を見せることもあったが、この日はそうしたことがなかった。勝敗が決すると、林とシュレメタは抱き合った。

表彰式では、林は銅メダルを獲得したトルコのエシュラ・ユルデゥズ・カフラマンからも抱擁を受けた。カフラマンは7日に林に敗れると、観客に向かって、女性の染色体を意味していたとされる「X」のジェスチャーをしていた。しかしこの日は、互いに笑顔を交わした。

この日の試合が終わったことで、今大会最も物議を醸した問題の一つも終わりを迎えた。ただ、この議論は今後も続くとみられ、次回ロサンゼルス五輪でのボクシングの採用に影響を及ぼす可能性もある。

林の試合の数時間前には、ケリフがこの問題をめぐってオンラインでハラスメントを受けたとしてフランスで訴訟を起こすと、ケリフの代理人だというフランス人弁護士が発表。ケリフについて、「正義、尊厳、名誉のための新たな戦いを始める」と説明した。

その後、林はメディアから、同様の措置を取るかと問われ、「チームと話し合う。どう対応するかは後で決める」と答えた。

また、大会中はこの議論を避けるため、自らをソーシャルメディアから「遮断」していたと説明。「もちろん、コーチを通してある程度の情報は耳にしていたが、あまり気にしていなかった」、「私はIOCから招待されて大会に参加した。そのことに集中していた」と話した。

議論のこれまで

林とケリフは昨年、「IBAの規定に定められた女子競技への参加資格を満たしていない」として、IBAによって世界選手権の出場を禁止された。

しかしIOCは、両者は「女性として生まれ育った」とし、五輪出場を認めた。

IOCはこれまでに、ロシア主導のIBAについて、ガバナンスと規則への懸念から、統括競技団体として資格停止にしている。また、IBAの検査についても疑問を呈している。

今回の議論は、ケリフと2回戦で対戦したイタリアのアンジェラ・カリニが開始46秒で棄権し、「自分の命も守らなくては」と涙ながらに語ったことから注目され、さまざまな意見が飛び交う事態になった。

IBAを資格停止にして以来、五輪のボクシングを運営しているIOCは、パスポートで女性と記載されていれば女子部門に出場できると説明。一貫して林とケリフを支持してきた。

ただ、選手らからは批判の声が上がった。ブルガリアのスヴェトラーナ・スタネヴァは林に敗れた後、カフラマンと同じく、リング上で「X」のジェスチャーを見せた。一方、中国の楊柳は、ケリフに決勝で敗れると、ケリフの腕を持ち上げて祝福した。

(英語記事 Lin follows Khelif by winning gold amid controversy

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0l8gkn971ro


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