車両価格は内燃車と同等以下、保守費用と燃費(電費)は圧倒的に安いというコストパフォーマンスの高さに加え、大型ディスプレイによるエンターテイメント機器や音声操作、スマートフォンからの遠隔操作、先進運転支援システム(ADAS)といった、EVとの親和性が高い機能も評価が高い。すでに「消費者が欲しい車」の座は内燃車からEVに変わった。
中国では内燃車の販売は大きく減少している。この煽りを食らって日系メーカーのシェアは最盛期からほぼ半減となる10%強にまで低下している。
ホンダが早期退職を募集、日産が生産台数を大幅削減、三菱自動車が撤退とその影響は深刻だ。21年のEV躍進元年からわずか4年で中国市場は激変した。この前例がある以上、「いくら伸びているといってもまだ少数」とは侮れない。
「クレイジーなレベルのEV普及策」は不可能
日本では「アーリーアダプターの購入が一巡したあたりでEV普及率は天井になる」との見立てを聞く機会が多いが、中国の自動車業界関係者では「EV普及率が閾値を超えると、そこからの急成長は止まらない」という楽観的な見方が主流だ。中国の見方が正しいという保障はないが、なにせ自国市場での成功が続いているだけに自信満々というわけだ。
東南アジアでも中国並のペースでEVシフトが続くのか。予測は難しいが、個人的には中国と同じペースで普及は進まないのではないかと見ている。
EV普及には優れた車両だけでは不足で、充電や保守整備、保険など関連インフラの整備が不可欠。中国がくり広げた「クレイジーなレベルのEV普及策」を、東南アジア諸国が模倣できるとは考えがたい。
それでもEVシフトは一定のペースで進むはずだ。東南アジア諸国も脱炭素の計画を策定している。
タイは30年までに販売台数の50%をEVにする。インドネシアは35年までに製造台数の30%をLCEV(ロー・カーボン・エミッション・ビークル、EVやハイブリッドなどを指す)に転換。ベトナムは50年までのカーボンニュートラル達成を目指す。計画実現にはEV振興は不可欠であり、購入補助金や充電インフラ整備はなんらかの形で継続されるはずだ。