今後どうなる
今後どうなるだろうか。そして日本にとって、それはどのような意味を持つだろうか。
そもそも、今、ロシアのウクライナ侵略を止めるのは、容易ではない。西側諸国が十分に軍需産業に投資していなかったので、弾薬生産が足りず、ウクライナ軍は弾薬不足気味になっている。ロシアからみれば、これは領土拡大のチャンスになっているから、今、戦争をやめる理由にならない。
一方、ウクライナにとっても、今、停戦することはよくない。ロシアに奪われた領土を取り返すチャンスは遠のくし、それに、西側諸国の雰囲気が変わるのが恐い。
今は、西側諸国は結束してウクライナ支援をしているが、停戦後も同じような結束が維持される保証はない。停戦後、打撃を受けていたロシア軍が再編し、再びウクライナに侵略してきたとき、西側諸国から支援してもらえるとは限らないのである。だとすれば、今は停戦するよりも、戦争しているほうがましだ、という判断になる。
それなのに、停戦に向けてインドも含めた各国が動き出したのは、トランプ前大統領が原因だ。トランプ前大統領はこの戦争を終わらせると豪語し、その発言の強さから「この人なら本当に何かやってしまうかもしれない」という雰囲気が世界に作られた。そして、世界は本当に動いている。
もし仮にトランプ前大統領が停戦を実現するようなことがあったとしても、実際の状況からすると、一時的なものにとどまる可能性が高い。かつて、トランプ前大統領が、北朝鮮と交渉し、ミサイル実験を凍結させた事例がある。あれに似たものになる可能性がある。
北朝鮮は、ミサイル発射実験を控えたが、ミサイル開発そのものをやめたわけではなかった。トランプ前大統領の下でロシアのウクライナ侵略に停戦がもたらされたとしても、それでロシアがウクライナを侵略する企みをあきらめる状況にはなく、停戦は侵略が再開するまでの一時的なものにとどまる可能性が高いだろう。
それでも、その一時的な停戦をめぐって、外交的成果を上げようとする各国の競争が激化し、無視しえないものになっている。特に、そこで主導権を上げようとする国の一つは、中国になるはずだ。中国は、停戦の仲介で成果を上げ、ロシアとウクライナ双方に影響力を拡大し、その他のグローバルサウスにも力を見せつけようとするだろう。
日本としては、中国がこれ以上、外交的成果上げ、世界を支配するリーダーになっていくと、国益に反する。中国に対して日本と同じ懸念をもっているインドの仲介外交の方が、日本の国益を利するだろう。